中堅中小企業の経営基盤改革術

SMB市場向けSaaSに死角はあるか連載:SaaSで一歩抜け出す中小企業(1/5 ページ)

SaaSの台頭は市場にどんな与える影響を与えるのか。パッケージベンダーのビジネスモデルにどんな変化が起きるのか。参入が相次ぐSMB市場向けSaaSに着目する。

» 2008年04月10日 09時36分 公開
[ノークリサーチ,ITmedia]

 ノークリサーチではSaaS市場を、「ソフトウェア(ライセンス)」「ハードウェア(サーバ・クライアント・ストレージ・ネットワーク機器・周辺機器)」「サービス(SI・サポート・トレーニング・アウトソーシング)」の各市場で代替的に形成されると定義する。

 ここでの「代替」するという意味は、SaaSは新たに創出される市場ではなく、既存のソフトウェア、サービスなどからリプレースされるケースが多いという予測を前提としている。もちろん国内IT市場を活性化させるという点で大きな期待もあるが、IT市場規模全体の大きな底上げになる要素は少ない。そのため、市場規模算出も「SaaS市場規模」として、既存の国内IT市場の「ソフトウェア市場」と「サービス市場」の中間に重なるイメージで存在する市場と位置づけている。

SaaS市場規模の推移

 IT市場規模は、07年で14兆1446億円、08年は前年比2.0%拡大で約14兆4275億円、以後年平均2.0%成長で12年には15兆6168億円に達すると予測される。

 07年より計測を開始した「SaaS的」市場規模は、SaaS型ソフトウェアの利用金額規模とSaaSに伴うセットアップ、カスタマイズ、保守などのサービス金額規模を含め、ソフトウェア市場、サービス市場の0.5%(417億円)を代替する。

 こうしたSaaS市場の伸び率については、大手パッケージベンダーの本格参入も見られるが、試行錯誤のビジネスモデル変革によってSaaS型ソフトウェアが普及するには最低でも5年は要すると見られ、SaaS市場は緩やかに成長するものと予測される。

 07年で同市場の約0.5%(約417億円)が、12年で同市場の約8.0%(約7746億円)がSaaS市場に置き換わると予測される。緩やかな成長とは言いながらも、5年間で約19倍の伸びが予測され、IT業界におけるビジネスモデル変革のムーブメントとなることは間違いないだろう。

国内IT市場のおけるSaaS市場規模の推移

注:SaaS市場規模算出方法

 ベンダーへのヒアリング、弊社独自のデスクリサーチをもとに既存のパッケージ型CRMを中心としたフロント系/コラボレーション系ソリューションのソフトウェア市場、サービス市場のうちSaaS型への代替市場を推計した。07年の場合、パッケージ型CRMソフトウェア市場・サービス市場の推定規模は約3000億円。このうちSaaS型CRMソフトウェア市場へ約2.5%が代替、SaaSに伴うサービス市場へ約7.5%が代替、それぞれ算出し合算した。同様にグループウェアなどのコラボレーション系ソリューションの代替部分を推計し合算した結果、07年のIT市場規模の0.5%に該当する417億円というSaaSの市場規模が算出された。

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