恋愛関係でのそれよりも、はるかに絶望的で悲惨な結末を生み出しやすい職場での「心理的すれ違い」。コミュニケーションツールを多彩に持ち、TPOを勘案して人間関係のパイプを太く、濃密に持つことが肝心だ。
前回は「コミュニケーション戦略の基本」ということで、自分の言いたいことをどう固めていけばよいのかということについて述べました。今回は、「コミュニケーション戦略の応用」ということで、いったん、言うべき中身が決まったら、次に、どのようにそれを効果的に伝えていくかについて述べたいと思います。一言で言えば、効果的なメッセージの発信戦略ということになります。
発信において考えないといけないのは、大きく分けて2つあります。
1つは、コミュニケーションのツールを豊富に用意することです。どんな手段を用いて発信していくかですね。これには例えば、メール、ブログ、SNSなどのIT系のものや、手紙やメモ、社内報、ポスターやちらし、シールやノベルティグッズ、目標設定や振り返りの個別面談、仕事の打ち合わせや出張・外出時の行き帰りの時間、職場でのすれ違いの瞬間の一言や挨拶、エレベーターの中での会話、職場ミーティング、TV会議、朝礼、タバコ部屋、スピーチや講演、研修、合宿、意識調査そして飲み会、親睦会、運動会などの社内行事など、ありとあらゆるものが考えられます。
これらは大きく分けると、フェース・トゥ・フェースでパーソナルな直接対話ツール、フェース・トゥ・フェースで一対多の準直接ツール、ITによる間接ツール、紙媒体による間接ツールなどになります。また一方通行だけではなく、双方向のしかけかどうかもポイントです。
また、皆さんがトップ層であれば、全社員集会やマスコミ経由での発信(日産のゴーン社長は盛んにマスコミに登場していましたが、そこで流されるメッセージは投資家や世間だけではなく、社員向けのメッセージも多かったと言われます)、本の出版や雑誌への寄稿、シンポジウムや国際会議などへの登場など、より多彩な手段が考えられます。
皆さんは、こうした多様なツールをどの程度使いこなしているでしょうか?
最近では、メール一辺倒になっている場合が多いのではないでしょうか。だんだん人が少なくなり、みなやることが増えて仕事が忙しくなり、一堂に集まったり、個々にタイムリーに会うことが難しくなっていることがその背景にあります。「すれ違い職場」になっているわけです。その点メールはとても便利ですが、立ち入った話や込み入った話をできる関係性ができていると、その効果はとても大きいのですが、メールはそうした関係性をゼロから生み出せるものではありません。
メールやブログやSNSでのコミュニケーションの効果は日常の職場での関係性の濃さと相関するわけです。物理的なすれ違い職場であればいいのですが、心理的なすれ違い職場であると、まずそちらの解決を急がねばなりません。実際そういう心理的なすれ違い職場が多くなってきている関係で、最近ではその是正のために、運動会や飲み会など、オフの場を利用した職場内の関係性の再構築に気を使う企業が多くなってきています。
いずれにせよ、コミュニケーションツールはとにかく多彩に持ち、TPOを勘案してパイプを太く、濃密に持つことが肝心です。人と人との関係なので、同じツールばかりでは飽きられてしまうこともあるからです。
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