常に厄介なものとして語られがちなERPパッケージのアドオン開発だが、現場で培ったノウハウを巧みにシステム化してきた日本企業が、それを安易に捨て去っていいのか、競争力を削ぐことになりはしないか、しばしば議論となる。IBMビジネスコンサルティングサービスの安瀬パートナーも、「企業の強みであり、誇りでもあるはずだ」と疑問を投げかける。
「SAPのアドオン開発は悪なのか? 本当はその企業の強みであり、誇りでもあるはずだ。SOAのアプローチで再利用できるようにしておけば、気兼ねなく使い続けられる」── IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS)のバリュー・デリバリー・センターを率いる安瀬和博パートナーは、パッケージのアドオン開発を絶対悪とみる風潮に疑問を投げかける。
日本アイ・ビー・エムとそのコンサルティング会社であるIBCS、およびSAPジャパンはちょうど1年前の2007年7月、「イノベーション・ラボ for エンタープライズSOA」を立ち上げ、SAPが提唱するエンタープライズSOAをデモによって体感したり、評価、検証できるサービスを開始している。
IBCSの刀根猛アソシエイトパートナーによれば、年初から既に十数社に対してプライベートワークショップを実施してきたが、その多くが1990年代から拠点単位でSAP R/3を複数導入してきた先進ユーザーだという。
「彼らは、R/3をバージョンアップするなどして引き続きSAPを情報システムのベースとして考えたいとしているが、彼らの細かいニーズにSAPだけでは対応しきれない場合もある」と刀根氏は話す。
安瀬氏も「世界数万社の導入実績があるSAPのパッケージは、サービスのベストプラクティスの集合体であり、積極的に活用することで効率化を追求できるが、その企業固有の強みを支える部分は、Javaなどによる手組み開発で補完することもできる。差別化と効率化を併せて実現するハイブリッドなSOAの考え方が求められている」と話す。
IBCSでは、SOAアプローチによるシステム構築は、ERPパッケージベースのサービスと新規の手組みサービスやレガシーアプリケーションをサービスとしてラッピングしたものを上手く組み合わせる「ハイブリッド型SOA」が主流になるとみる(下のグラフィックを参照)。
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