FOSSにとってWebアプリケーションは次の戦いの場か?Trend Insight(1/2 ページ)

Webアプリケーションは少なくとも2つの理由でFOSSに重大な挑戦状をつきつけている。10年もすれば、ソフトウェアの90%はサービスとして実行され、オープンソースは消滅してしまうのだろうか? 今起きつつある変化をまとめてみよう。

» 2008年07月25日 04時07分 公開
[Bruce Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 Webアプリケーションの人気の高まりを懸念して、Clipperzプロジェクトのマルコ・バルリー氏は、この動向にFOSS(free and open source software)はどう応えるべきかという点についてはじめての詳細な提案の1つを書いた。バルリー氏もClipperzも一般にあまり知られていないが、Free Software Foundationのリチャード・ストールマン氏や、FunambolのCEOを務めるファブリツィオ・カポビアンコ氏(WebアプリケーションにおけるFOSSの意義を以前から主張している一人)のような有名どころが彼の考え方に耳を傾けつつある。

 Webアプリケーション(サービスとしてのソフトウェアとかクラウドコンピューティングとも呼ばれる)とは、ユーザーがWebブラウザを用いてアクセスし、その本体はプロバイダーのサーバに置かれるソフトウェアのことである。どう呼ぶにせよ、Webアプリケーションが少なくとも2つの理由でFOSSに重大な挑戦状をつきつけていることは間違いない。

 第一に、Webアプリケーションは伝統的な意味でのソフトウェア配布を行わないので、GPL(GNU General Public License)のようなフリーライセンスの要件("プロバイダーはコードをコミュニティーに返さなければならない")が迂回(うかい)される。そのため、Googleのような企業はFOSSを自社のWebアプリケーションに利用する一方で、自社で行ったあらゆる変更をプロプライエタリとして扱うことができる。

 第二に、ユーザーとプロバイダーの間でデータがやり取りされ、また多くの場合、プロバイダーのソフトウェアはユーザーのマシンにインストールされることから、Webアプリケーションはフリーライセンスにおいてほとんど扱われることのないプライバシーの問題を提起する。

 これらの問題は今に始まったものではない。ティム・オライリー氏は何年も前から警告してきたが、「オープンソースライセンスは時代遅れ」という彼のセンセーショナルな宣言のせいで議論が本筋から逸れる傾向があった。

 その上、バルリー氏が強調するように、Webアプリケーションの利便性が先行して批判が抑えられる傾向があった。バルリー氏はLinux.comに次のように述べている。「セキュリティ分野でずっと活動してきた立場から言わせてもらうと、利便性は大きな誘因になる。ある意味で自由よりも、セキュリティよりも力を持つ」

 しかし同時に、これらの問題に取り組む必要性も高まりつつある。カポビアンコ氏は、ワープロやスプレッドシートのような日常業務アプリケーションがWebブラウザから利用できるようになるとは誰も予想しなかったと指摘し、「どのアプリケーションもサービスとして実行可能なら、そのうちサービスとして実行できるようになる。市場はその方向に進んでいる」という。彼はWebアプリケーションの提起した問題をFOSSの「がん」と呼び、「サービスとしてのソフトウェアを過小評価して、この問題を見逃すなら、それは間違いだ。世界はサービスとしてのソフトウェアの方向へ進んでいる。10年もすれば、ソフトウェアの90%はサービスとして実行され、オープンソースは消滅する」と補足する。

Webアプリケーションのフリー化

 バルリー氏が行動計画を提案する以前、Clipperzを有名にしたのはClipperz Community EditionのためのWebサイトをGoogle Codeにホストさせる問題だった。同プロジェクトは、そのソフトウェアをAffero General Public License(AGPL)の下で認可したいと考えていた。このライセンスは標準GPLにおける配布の抜け穴をふさぐために、サービスとしてのソフトウェアの提供を通常の配布と同じ契約的拘束を伴う配布形態であると規定する。

 しかし、GoogleはAGPLの下で認可されるプロジェクトをホストすることを拒否した。ライセンスが野放図に増えるのを避けたいというのが当初の主張で、後になって、AGPLは実証されていないというようになった。だが、観測筋によると、Googleは当の抜け穴で利益を上げているため、AGPL絡みにただ過敏であるというのが本当の理由のようだ。

 Clipperzは結局、Community EditionのホームをSourceForge.netに見つけた。しかし、この問題のもっと重要な成果はバルリー氏がリチャード・ストールマンと長期にわたるメールのやり取りを始めたことだ。「まさに啓示だった」とバルリー氏は言う。そこでの話し合いがそのまま彼の行動計画へとつながったのである。

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