FOSSにとってWebアプリケーションは次の戦いの場か?Trend Insight(2/2 ページ)

» 2008年07月25日 04時07分 公開
[Bruce Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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問題への取り組み

 バルリー氏が端から明かしていることだが、彼にWebアプリケーションの拡大をとどめるつもりはない。「Webアプリは大好きさ」とバルリー氏は言う。「だが、もっと多くの自由ともっと多くのプライバシーを求めるころ合いだと思うね」

 Clipperzは先陣を切ってAGPLを採用したプロジェクトの1つだった。「これこそ待ち望んでいたものだった」とバルリー氏は言う。この熱中に比して、バルリー氏の提案する最初のステップは、AGPLの使用を奨励するというありきたりのものである。「自分が自分のマシンでどんなコードを動かしているか、また他人のマシンでどんなコードを動かしているか知ることは自分の権利だと思う」と無邪気に話す。この運動の一環として、バルリー氏はフリーソフトウェアユーザーのためのWebアプリケーションの「AGPL suite」についての提案を求めている。また、開発者に対してはClipperzに参加し、AGPLの伝道者になることを強く勧めている。

 Webアプリケーションによって提起されたプライバシー問題に取り組むため、バルリー氏は「ゼロ知識Webアプリ」というものを提唱している。これはユーザーのデータとIDを暗号化してプロバイダーから見えないようにするアプリケーションだ。

 この提案はバルリー氏独自のものである。「リチャード・ストールマンはソースコードの自由だけ気に掛けていた。わたしとしては自分のデータの自由も気になる。自分のコントロール下にあるワークステーションやネットワークにインストールされたソフトウェアについては、ほとんど問題にならない。しかし、自分のアプリケーションをWebに移動すると、データも移動することになるが、データをコントロールする権利は手放したくない。自分のデータであることに変わりはないのだから」と彼は言う。

 実際、セキュリティの専門家であるバルリー氏はデータのプライバシーに大変関心があり、フリーソフトウェアの伝統的な4つの自由に言及して「これはフリーソフトウェアが扱うべきもう1つの自由である」と主張する。

 長期的な話だが、バルリー氏はユーザーの自由へのもういっそうの保護としてWebブラウザをフリーにする変更も求めている。具体的にバルリー氏の描くブラウザとは、ゼロ知識プロトコルに基づくコードを認証するもので、さらにその上で(これはストールマン氏の提案に沿ったものだが)JavaScriptまたはAjaxコードをメモリ内のコピーと照合し、何か変更が生じたときユーザーに警告するというものである。「このソリューションにより、ユーザーはブラウザで知らぬ間に実行される悪意のあるコードから保護され、データが盗まれたり、ゼロ知識アーキテクチャが破壊されたりすることがなくなる。この機能は主要なブラウザに対するエクステンションとして提供されるだろう」とバルリー氏は言う。

 バルリー氏は、これらのアイデアをさらに発展させていく考えであり、読者に対しては独自の提案をつけ加えること、アイデアをブログなどで発表すること、この運動に寄付することを強く求めている。また、この運動にどんな名前をつけたらよいか役に立つ情報も求めている。

反応

 今のところ、バルリー氏の提案に対する反応はごくわずかで、その多くはともかく彼を励ますものである。

 ストールマン氏とはWebアプリケーションの提起する課題について輪郭を議論したが、ストールマン氏は詳細なソリューションについては議論を辞退した。「このテーマについて今自分の記事を書いているところであり、それが完成する前に詳しいことを書きたくない」とのことである。

 一方、ClipperzのコードをAGPLに移行することを最初に勧めたカポビアンコ氏は、もっと協力的だ。カポビアンコ氏はバルリー氏の提案をブログで発表し、ゼロ知識Webアプリケーションについて詳しく説明している。また、「AGPLが必要であるという点についてはマルコに完全に同意する」とLinux.comに述べている。「開発者は、copyleftというオープンソース概念を信頼するのであれば、まずAGPLを採用するのがよい。これで、コミュニティーは保護され、コードに対して行った変更がコミュニティーに返される」

 バルリー氏の提案は、FOSSコミュニティーの相当数の人々がその気になれば簡単に実装できるものである。それよりも、「起きつつあることに人々の意識が向いていないことが問題だ」とカポビアンコ氏は言う。「オープンソースを利用して金をもうけながら、コードをコミュニティーに返さない企業が存在する。そうした企業はバルリー氏の提案に反対している。苦しい戦いだ。だが楽観している。オープンソースのよい点は、よいことがすぐ起こることだ」

 無論、ことが十分速く起こるかどうかは別の問題だ。バルリー氏とカポビアンコ氏が正しければ、その答はFOSSの将来に大きく影響するだろう。たぶん、FOSSに未来があるかどうかを決することになる。

Bruce Byfieldは、コンピュータ専門誌記者としてLinux.comに定期的に寄稿している。


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