「こちらから売り込みに行かなくても、顧客から扉を叩いてもらえるようになった」
ソニーでB2Bソリューション事業本部に務める坂尾勝利サイネージ事業開発部商品企画課統括課長は、デジタルサイネージに対する顧客の反応をこう表現する。ブロードバンドの普及とディスプレイの低価格化、動画や音声など取り入れた販売促進を望む企業の増加などが追い風となり、新たな利益に結びつく兆しが見えてきたからだ。
Olympicが採用したデジタルサイネージは、ソニーが2008年に本格展開を始めたデジタルサイネージのサービス基盤「BEADS」を使っている。同社は2002年ごろからメモリカードなどに保存したコンテンツを放映する「パブリックディスプレイ」の販売を手掛けてきた。
ディスプレイの販売はソニーの“お家芸”の1つともいえる。だが、「製品の販売数が増えると単価が下落し、市場は停滞していく」(B2Bソリューション事業本部の齋藤仁サイネージ事業開発部統括部長)。利益を出すためには常に試行錯誤を続けなければならない。
これまではディスプレイの切り売りを主なビジネスとしてきた。だが、「小売業などでもデジタルサイネージの認知度は高まっている」(坂尾氏)。そこでディスプレイの貸し出しや構築、運営、保守までを一括で受け持つデジタルサイネージサービスを展開することにした。機器の設置やコンテンツの編成、システムの監視などはソニーのグループ企業が手掛ける。「パネル売りに加え、その周辺のサポートをビジネスに取り入れることで、デジタルサイネージの新たな市場を開拓できる」と齋藤氏は意気込む。
同社はさらなる期待をデジタルサイネージ市場に込め、成長戦略を描いている。運営や保守といったマネージドサービスに加え、デジタルサイネージを「広告メディア」と見立てて、さまざまな企業から広告を募り、利益の拡大を目指す。企業が捻出する販売促進の費用に比べて、宣伝費は「額が1けた多い」(齋藤氏)からだ。
Olympicでは、「ダイエットに効くヨガ」というコンテンツを配信している。それを見終えると、そのコンテンツのスポンサーである生活情報誌を手掛けるオレンジページの雑誌が紹介されていた。店舗にデジタルサイネージを貸し出し、コンテンツの合間にさまざまな広告を挟み込む。「スーパーに来て商品を買う購買層」を顧客として囲い込みたいと考える企業にとって、デジタルサイネージは格好のメディアとなる。
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