PHP on IISの“ホントのところ”Trend Insight(1/2 ページ)

PHP on IIS。意外に思われるこの組み合わせに対するニーズが増えてきているという。この組み合わせが提供する価値とは何か。マイクロソフトの加治佐CTOとゼンド・ジャパン代表取締役社長の福安氏に“ホントのところ”を聞いてみた。

» 2008年10月24日 03時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 Webサーバのインフラといえば、LinuxとApache。少し前ならこうした答えがかなりの割合を占めたと思うが、久しぶりに英Netcraftが行っているWeb Server Surveyを見ると、どうやら状況が少し変わりつつあるようだ。

Netcraftが行った最新のWeb Server Survey(出典:Netcraft)

 Web Server Surveyでは、もう数年前からApacheとIISの2強体制が続いていたが、最新の調査(2008年9月)では、Apacheがほぼ半数の49.82%のシェアであるのに対し、Microsoft(IIS)は34.88%のシェアとかなり迫っている。Webサーバとしての成熟も進んでいることから、細かな機能面ではほぼ差がない両者。Microsoftとしては、Linux、Apache、MySQL、PHP(Perl、Python)を使ったいわゆるLAMP環境に変わる選択肢としてWISP(Windows、IIS、SQL Server、PHP)を推し、究極的にはWISA(Windows、IIS、SQL Server、ASP.NET)を推してシェアの逆転を狙いたいのだと予想される。

 一方、PHPソリューションを提供するZendの立場になって考えれば、Apacheに次ぐシェアを持つIIS上でPHPの稼働実績を積むことができれば、それはビジネスの拡大に直結する。かつてZendは独自でPHPをIIS環境に実装しようと試み、「Zend Winabler」という製品をリリースしていた時期もある。しかし、この取り組みは必ずしも成功とは呼べないものだった。Microsoft側もこの時点では、まだPHPをそれほど注視しておらず、ISAPI/CGIという開発用インタフェースを“用意”していた程度で、PHPが高速に動作しないことがネックとなっていた。

提携によりPHP on IISは現実的な選択肢に

 この状況に劇的な変化が訪れたのが2006年10月末。MicrosoftとZendは、Windows ServerにおけるPHPの対応強化を目的とする技術提携を発表。この具体的な成果物として誕生したのがFastCGIである。IIS上で動作するPHP実行環境の品質についてMicrosoftが本腰を入れたことで、PHP on IISは現実的な選択肢としてユーザーの検討の俎上(そじょう)に載ったといえる。専用のページも立ち上がっており、PHP on IISにかんする情報も集約されつつある。

 ゼンド・ジャパン代表取締役社長の福安徳晃氏は「WebサーバのシェアはすでにApacheの一人勝ちという状況ではありません。PHPのビジネスを推進するというわたしたちの立場からすれば、Apacheに並ぶシェアを持つIISと密に連携したソリューションを提供していくことも求められています」と話す。

 IISとPHPにはそれぞれ追い風も吹いている。IISはバージョン7.0で機能のモジュール化を果たした。それまでのバージョンでは単一のDLLとして組み込まれていたものがそれぞれ個別のDLLとなったことで、ゼロデイコードなどに対する影響を最小化するとともに、機能の追加・拡張が容易に行えるようになった。IIS 7を搭載するWindows Server 2008も登場から半年が経過し、企業も様子見の段階から検討フェーズに入っているという市場の変化もある。

 一方、PHPはメジャーバージョンアップとなるPHP 6が登場間近となっている。PHP 6では、名前空間のサポートをはじめ意欲的な機能が多く実装される予定で、その動きはPHP6の露払いとしてリリースされているPHP5.3に強くみることができる。PHPが人気を博するようになったことで、AdobeなどもRIAの観点からZendと提携し、PHP開発者を囲おうとする動きを見せている。PHPに対する注目は現在右肩上がりであるといってよい。

 両社にとって機は熟したといってよいだろう。以下はマイクロソフト業務執行役員の加治佐俊一CTOも交えてPHP on IISの“ホントのところ”を聞く。

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