景気後退の中でもSaaSエンタープライズアプリ市場は成長――Gartnerの見方2010年まで回復見込めず(1/2 ページ)

Gartnerによると、景気後退の中にあってもSaaSエンタープライズアプリケーションとクラウドコンピューティングの市場は今後も拡大する見込みだ。しかしSaaS市場は企業の支出抑制の影響を受け始めており、来年にはSaaSへの投資が減少する可能性もあるという。

» 2008年10月27日 17時06分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 Oracleのラリー・エリソンCEOは、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)とクラウドコンピューティングに対して弱気な見通しを抱いていることを隠そうとはしない。しかし誰もが同氏と同じ見方をしているわけではない。

 Gartnerでは、SaaSアプリケーションを「ユーザーがインターネット経由で利用するソフトウェアサービス」と定義している。同社が先週公表した報告書によると、エンタープライズアプリケーション市場におけるSaaSの売り上げは、2008年に64億ドルを超える勢いで伸びている。

 これは、2007年におけるSaaSの売り上げ(51億ドル)と比べると27%という大幅な増加となるもの。さらに、2012年までに同市場の規模は2倍以上拡大し、148億ドルを超える見通しだとしている。これらの数字は、企業が今後もSaaSモデルへの移行を進める一方で、サーバやストレージをはじめとするIT機器への支出を削減することを示している。

 これらの計算は、金融業界の信用収縮が引き金となって9月にハイテク市場が冷え込む前なのか、その後に行われたものなのか、と疑問を抱いている読者もいるだろう。

 Gartnerのアナリストで報告書の作成に携わったシャロン・マーツ氏によると、この報告書は、ハイテク市場の低迷とレイオフが本格的に始まる前の8月にまとめられたものだという。

 「これは9月の市場の混乱を反映したものではないが、それを考慮に入れても、この見通しを修正する必要はないだろう」とマーツ氏は説明する。

 マーツ氏のチームは7〜9月期にSaaS支出の減速傾向が現れ始めたのに気付いたという。しかし同氏は、報告書の中のSaaSに関する予測には大きな変化はないとみており、次のように語っている。

 「その兆候は7〜9月期の終わりごろに現れ始めたばかりだ。バイヤー側の視点からいえば、企業は商談に対して若干のためらいを示し始めた。一部の業界では、バイヤーが投資を抑制したり、予算を凍結したりする傾向も見られた」

 これらの業界には、2008年に打撃を受けた金融業界のほか、100日分の過剰在庫に悩む自動車業界などの「個別製造分野」などが含まれる。

 しかし、金融サービス分野でIT投資が完全に途絶えることはない。銀行間の巨大合併は、SaaSに新たな機会を切り開くものとなるだろう。

 SaaSではどんな分野が活気づいるのだろうか。意外なことではないが、Google Apps、AdventNetのZoho、Adobe BuzzwordといったSaaSベースのオフィスプロダクティビティ/コラボレーションスイートが最も急速に成長している。

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