Gartnerによると、これらのSaaSスイートは2012年までに、ソフトウェアの総販売額の9%を占め、Microsoft OfficeやIBM Lotusなどの古典的なオンプレミス(社内保有)型製品と共存するという。言い換えれば、企業ユーザーの中には、Google Apps Premier Editionやほかの製品の有料版にお金を支払うところもあるということだ。
SaaSプロダクティビティスイートは人気が出るかもしれないが、これらは基本的に「フリーウェア」なので、SaaSの売り上げに大きく貢献することはない。それと区別されるのが、「CCC」(コンテンツ、コラボレーション、コミュニケーション)市場である。マーツ氏によると、GartnerではCCCを「電子メール、e-ラーニング、インスタントメッセージング、検索、チームコラボレーション、Webカンファレンス、エンタープライズコンテンツ管理のためのソフトウェア」と定義している。
IBM Sametime UnyteやCisco WebEx Connectといった製品のほか、CallWave、Yuuguu、Yugmaなどの中小ベンダーの製品がCCC市場の売り上げに貢献している。Gartnerによると、同市場の規模は2008年に21億ドルを上回り、2012年には47億ドルを超える見込みだ。
SaaSエンタープライズアプリケーション市場全体で2番目に大きな分野がCRMである。マーツ氏によると、Salesforce.com、SugarCRM、NetSuiteといった企業がこの市場をけん引しており、SaaS型CRM製品の売り上げは17億ドルを上回る。Gartnerでは、2012年にはSaaS型CRM製品の売り上げが32億ドルに達すると予測している。
Gartnerの報告書が信用できるとすれば、SaaSの売り上げ見通しは2008年以降もバラ色のようだが、マーツ氏は、2009年には景気後退がSaaSおよびハイテク市場全体に影響を及ぼすとみている。その影響がどの程度になるかは不明だという。
Gartnerでは、SaaS型とオンプレミス型のソリューションの両方を含めた全世界のソフトウェア市場は、2012年まで毎年10%の成長を続けると予測している。現在の景気後退の影響を勘案した最悪のシナリオでは、この数字が9.4%にとどまるとしている。マーツ氏は次のように説明する。
「われわれは当初、2008年に景気が減速し、2009年末に回復に向かうと考えていたが、現時点では、2009年も景気が減速し、回復は2010年になるとみている。しかし市場が非常に神経質なので、予測は極めて困難だ。金融危機の長期的影響がどのようなものになるか不明だ」
IT市場の見通しは悪くなさそうだが、コストの低さが魅力とされるSaaSが、オンプレミス契約の減少分を補うだろうと結論付けるのは早計だ。
マーツ氏によると、景気低迷の中でもSaaS市場は成長するという期待論が広がっているが、SaaSが利用されるのはビジネス上で合理性がある場合だけだという。言い換えれば、SaaSのゴールドラッシュは期待できないのである。それよりも、あちこにクラウド(雲)が点在するような情景になりそうだ。
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