StarOffice 9のリリースに垣間見るSunの一人相撲戦略Trend Insight(1/2 ページ)

OpenOffice.orgの存在もあり、SunがStarOfficeの扱いに苦慮しているのは明らかである。それでも企業ユーザーには魅力的に映るかもしれないが、かつて期待されたStarOfficeの魅力を損なう方向に進んでいるように思えてならない。

» 2008年12月02日 08時00分 公開
[Bruce Byfield,SourceForge.JP Magazine]
SourceForge.JP Magazine

 StarOffice 9(編注:アジア地区では「StarSuite 9」)の現状を見ると、コメディアンのGraham Chapmanが一人相撲ならぬ“一人レスリング”をしていたモンティ・パイソン(Monty Python)の寸劇が思い起こされてならない。StarOfficeのうたい文句は“Microsoft Officeと同等のオフィススイート”というものであるが、その一方ではOpenOffice.orgに対抗するかのような形でマーケッティングやバンドルが同じような比重で行われているようであり、特に後者はSunの支援の下でStarOfficeと共通のコードベースにて構築されたフリーソフトウェアプロジェクトなのだ。しかもStarOffice 9に至るまで、両者の相違点はリリースされるごとに縮まってきており、こうなると“どのような潜在カスタマーをターゲットとしているのか”という疑問が生じてくる。

 StarOfficeのリリース前に公開されたマーケティング資料には、同製品のMicrosoft Officeに対する優位性が強調されており、それらは「最有力の代替品」という表現と(市場占有率では明らかに劣勢であるが)、スタンダードバージョンでわずか60ドルという価格設定であった。そのほかに強調されていたのは、StarOfficeは従来型のメニューおよびツールバーを踏襲しており、Microsoft Officeで行われたリボン方式への切り替えに追従していないという点である。ここでのリボン方式のインタフェースに対する評価は、「新しければ優れているとは限りませんよね?」と前置きした上で、「まるでWindowsアプリケーションのようじゃないですか?」という扱いなのだ。

 こうした営業努力はまだ分かるとして、SunはStarOfficeとOpenOffice.orgの差別化も行っている。Sunの主張は、OpenOffice.orgとは異なりStarOfficeには特許侵害訴訟時の保障およびコンサルティングとサポートサービスが付属していますというものなのだが、これはあたかもSunは自ら長期にわたって行ってきたOpenOffice.orgへの支援活動のことを忘れ去っているかのごとき発言と思えてならない。

 Sunの態度がこうした一人レスリング状態に陥るのは、ある意味不可避なのかもしれない。というのもStarOffice 9は過去のリリースより大幅な改良が施されており、ノート機能の拡張、Writerでの複数ページ表示、Impressでのテーブル機能の追加、全体的なVBAサポートの向上、Mac OS Xのネイティブサポートなど多数に及んでいるのだが、その多く(というよりほぼすべて)はOpenOffice.org 3.0での改善点と共通しているのだ。しかもOpenOffice.org側の新規リリースは1カ月以上先行していたため、StarOfficeの機能向上というニュースも、その分だけ色あせて感じられるのである。

 またライセンス面においても、StarOfficeがプロプライエタリ系としては破格の制限の緩さで提供されているのは事実だとしても、OpenOffice.orgがGNU Lesser General Public Licenseの適用下で提供されているという事実の前には比べるべくもない。つまり少し考えてみれば、取得コストが無料で使用上の制限も課されず機能的にも同等なOpenOffice.orgがあるのに誰がわざわざStarOfficeを選ぶのか、という疑問が浮上してくるのだ。

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