ビジネスの本質と顧客満足へのこだわりが成長の礎に「2009年 逆風に立ち向かう企業」シマンテック(1/2 ページ)

「短絡的な経営体質に陥ることのないよう、今こそ本質にこだわるべきだ」とシマンテック社長の加賀山進氏は話す。骨格となる事業領域でのパートナー、顧客との信頼が生き残る術になるという。

» 2009年01月06日 08時00分 公開
[聞き手:國谷武史,ITmedia]

 シマンテック社長の加賀山進氏は、2009年におけるIT投資予測で厳しい見方が広がる中、ベンダーにとっては不況下でも揺るがない顧客との信頼関係を築くことが生き残る術になると話す。2009年おけるIT経営では企業顧客がどのような課題を抱えるのか、同社は顧客にどのよう答えを提示するのか。加賀山氏に聞いた。

加賀山氏

ITmedia 2008年後半から経済情勢が大変厳しくなりました。市場環境をどのように見ていますか。

加賀山 急激な経済の冷え込みはしばらく続くと見ています。本来であれば、毎年数百人規模を雇用しなければ事業継続が厳しい企業でさえ新規雇用を完全にストップしているほどです。そうした環境にあって企業に求められるのは、企業が持つ「本質の力」をどのくらい発揮できるかということではないでしょうか。本質の力とは顧客ニーズの急激な変化を乗り越える信頼や忍耐、財務面を含めた経営体質、製品価値、顧客満足度など経営を支えるための背骨の強さです。

 経済が落ち込むと、物事を短期的な視点で進めようとする風潮が高まります。特にIT業界は従来からこの傾向が強いのですが、今後は国内の一般企業も含めてこの傾向がますます顕著になるでしょう。同時に今まで関係のあった相手の本質が見えやすくなり、状況をシビアに分析する見方が強まります。今まで関係のあった企業が、関係を続けるに値するかどうか、そうした評価が一人ひとりの社員レベルでも試されるようになるでしょう。

 そうした厳しい見方がされる中で、企業の本質的な力を発揮していくというのは非常に難しいことです。変化に動じないためには、本質的な強さを顧客やパートナーへ明確に提示しなければなりませんし、その場限りの対応をしていては簡単にはげ落ちてしまいます。

ITmedia シマンテックの「本質の力」とはどのようなものでしょうか。

加賀山 わたしが重視するのは製品やサービス、サポートを足し合わせた「顧客の全体満足度」だけです。2008年春から顧客と正面から向き合うことに取り組んできましたが、経済情勢の変化を受けてもっと加速させなければならなくなりました。

 「シマンテック」の名前を知ってはいても、実際には「何をしている会社なのか分からない」という顧客が多いというのが現状です。セキュリティ対策やインフラストラクチャの領域での製品、サービス、サポートを現場レベルの方が知っていても、経営層にはまったく知られていなかったのです。現在のIT経営にはコンプライアンス対応やディザスタリカバリ、リスクマネジメントといった全社レベルの課題が存在しており、わたしたちは顧客企業にとってそれら課題に向き合うパートナーにならなければなりません。

 そのため、「Secure & Manage The World's Information」というコンセプトを表明しました。企業および個人の顧客が抱える情報を世界規模で保護・管理するというものです。デジタル情報の保護は顧客にとって非常に重要な課題となりつつあり、われわれはこの領域で本質的な力を発揮できる存在になろうとしています。

ITmedia 具体的にはどのようなニーズが新たに登場し、それに対してどのような答えを提示するのでしょうか。

加賀山 これまではセキュリティ対策やバックアップ、ストレージ管理などが企業ITの重要な課題であり、われわれはこれらのニーズに応えた製品とソリューションを提供してきました。現在ではコンプライアンスやリスクマネジメントに加えて仮想化や情報漏えい対策、スパム対策、アーカイブなどの強化が求められています。

 これらのニーズに対しては積極的な投資を継続しており、技術開発やサポート、サービスの拡充、買収などによって顧客に包括的な解決策を提供できるよう目指しています。さらに、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)への対応やクライアント環境の仮想化、クラウドサービスの実現など、今後数年先に企業顧客が求めるであろうITの新たな課題に対しても、先行投資を積極的に行い、迅速に解決策を提供できるように準備を進めています。

 こうした取り組みを進める上で、われわれの目指す方向にマッチしない事業領域は有望なものであっても売却などをし、選択と集中を徹底しています。特にわれわれのようなソフトウェア産業は、本質的な力を発揮できる領域で確固たる存在を確立しなければ生き残れないと考えています。われわれは、本質的な力を発揮できる領域に徹底してこだわり、顧客とパートナーにとって必要不可欠な存在にならなければなりません。

ITmedia 顧客やパートナーとの関係作りをどのように進めていくのでしょうか。

加賀山 身近なところでは、顧客が本当に必要としているセキュリティ情報をWebサイトできちんと提供する、パートナーとの契約書の内容を明瞭して一緒にビジネスをしていく上での懸念事項を解消するといったものが挙げられます。

 こうした小さなところから徹底して顧客やパートナーと真摯に向き合う努力をしなければ、彼らが求めるセキュリティや情報管理に対する課題の解決策を提供できる存在にはなれません。その中にわれわれが顧客へ直接働きかける取り組みも含まれますが、従来の仕組みを大きく変えるというわけではなく、われわれが率先して顧客のビジネスを支援する存在であることを訴えることで、パートナーが対顧客へのビジネスをしやすくなるようにしていきたいという狙いも含んでいます。

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