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iSCSIが牽引する中堅・中小向けストレージ――大手ベンダーの動向はアナリストが斬るITトレンド(2/3 ページ)

» 2009年02月20日 08時00分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

アーカイブに適したCASを採用――富士通

 同社のストレージブランド「ETERNUS」の中で、中堅・中小向けのエントリモデルとしてはIP-SAN/FC-SANに対応した「ETERNUS 2000シリーズ」が提供されている。100〜500万円程度の価格帯の3モデルが用意されており、中堅Lクラスから中堅Mクラスが主な対象となる。NAS製品の「NR1000F」についてはNECと同様にF5の「ARX]と連携することで、ストレージ仮想化ソリューションを提供している。

 また同社のユニークな試みとしては「CAS(Content Aware Storage)」が挙げられる。SANはブロックアドレスを元にしたブロックアクセス、NASはファイル名を基にしたファイルアクセスである。一方、CASは「コンテンツID」をキーとし、ファイルシステムの手前に設けられた「コンテンツサービス」がデータとメタデータをパッケージ化した「コンテンツオブジェクト」を特定する。「ETERNUS AS500」はそうしたCAS製品だ。ストレージ部分には「ETERNUS 2000」が使われており、同社のサーバ「PRIMERGY」との組み合わせで構成されている。また、製品面だけでなく、グループ企業やパートナー販社によるソリューション提供力が同社の強みといえるだろう。

従来の大規模向け製品に加え、低価格モデルも登場――日立製作所

 ハイエンド向けには「Hitachi Universal Storage Platformシリーズ」、ミッドレンジ向けには「Hitachi Adaptable Modular Storageシリーズ」を展開し、従来は比較的大規模企業向けの製品を得意としてきた。

 そうした同社が中堅・中小企業向けに展開するのが、「Hitachi Simple Modular Storageシリーズ」である。その第1弾となる「Hitachi Simple Modular Storage 100」は中堅Lクラスも対象となる100万円を切る価格でありながら、同社が培ったさまざまな技術が盛り込まれている。

独自のアーキテクチャで運用管理を自動化――デル

 「PowerVault」、買収したEqualLogicによる「Dell EqualLogic」、EMCと共同で開発する「Dell/EMC」の3つのブランドを擁している。100万円を切るiSCSI対応ストレージとしては「PowerValult MD3000i」が用意されている。

 また同社のサーバ製品「PowerEdge 1950」とDASストレージ製品「PowerEdge MD3000」を組み合わせ、iSCSIとNASの両方に対応した「PowerVault NX1950」も200万円を切る価格で提供している。サーバと同様に、中堅LクラスでもiSCSIや、iSCSIとNASが混在したストレージ環境を構築できる価格面での手軽さが同社の強みといえる。

 中堅Hクラス向けとしてはFC-SANストレージの「DELL/EMC AXシリーズ」、仮想化機能を備えたiSCSIストレージとしては「DELL EqualLogic PS5000シリーズ」が提供されている。特に「DELL EqualLogic PS5000シリーズ」は独自の「ピア・ストレージアーキテクチャ」が大きな特徴だ。

 各種コンポーネントやディスクアレイが「ピア」と呼ばれる単位として並列かつ対等に協調動作する構造になっており、これによって負荷分散、ストレージプールの構成、ストレージ階層の構成、スナップショット作成、データレプリケーションといった各種運用管理タスクの自動管理を実現している。価格帯は800万円からとなるが、データ量の増加に対処しつつ、運用管理負担を軽減したいという中堅Hクラスには適したソリューションとなるだろう。

3つの主要インタフェースに対応した中堅・中小企業向け製品をリリース――EMCジャパン

 同社は中堅・中小企業向けにもNAS、iSCSI、FC-SANを全てサポートした統合ストレージ製品を提供していることが特徴だ。「Celerra NS20」は同社のミッドレンジ製品「CLARiX CX3」をベースとし、約400万円からの価格帯となっている。「Celerra NX4」は同社のエントリ製品「CLARiX AX4」をベースとし、約200万円からの価格帯となっている。

 ストレージへのアクセス手段がまだ定まっていない中堅・中小企業にとっては、3つの主要インタフェース全てに対応している点は大きなメリットとなる。また「CLARiX AX4」は100万円を切るiSCSI/FCの2モデルを揃えた製品として、NECとの共同開発で提供される製品である。「Celerra NS20」と「Celerra NX4」は大塚商会が導入・設計サービスを提供しており、今後の裾野の拡大が予想される。

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