Googleブック検索の和解が与える影響ネットの逆流(13)(2/3 ページ)

» 2009年03月08日 08時00分 公開
[森川拓男,ITmedia]

 オルタナティブブログのブロガーである栗原潔氏は、今回のGoogleの動きを「破壊的なスキーム」と表現した。確かに、このサービスが提供されるのは、米国以内からのアクセスに限られるが、スキャン対象となる書籍は、全世界のものである。しかも、先に触れたように今年の5月5日までに異議申し立てをしない場合、著作権が有効でも絶版本に関してはGoogleが全文スキャンをして販売することが可能となっているのだ。売り上げの63%が著作権者に回されるというが……栗原氏が指摘するように、これまで絶版本から得られる収益はゼロであったのだから、多少なりとも収益が上がるのは魅力的に思えるかもしれない。

 読者からすれば、これまで入手不可能だった絶版本が、ネットを通じて自由に閲覧できるようになれば、便利なことは確かだ。

 Googleブック検索は進化を続けていて、2008年12月9日には、過去に発行された英語の雑誌記事の検索も可能になり、2月5日にはiPhoneからの利用が可能になった。

 絶版になってしまった書籍は、確かに図書館や古書店などを巡らない限り、なかなか出会うことができない。そういった書籍も、Googleブック検索を通じて、データを購入できたり、もしくはネット書店、図書館などの在庫確認をして、実物を読むことができるのならば素晴らしい。Googleマップなどのサービスと連携すれば、いとも簡単に構築できるからだ。

 かといって、絶版と判断した場合、申請をしなければ勝手にスキャンしてネットに公開してしまうというのは、いささか乱暴のような気もする。書籍によっては、事情によってあえて絶版にしたものも多い。そういった書籍に関して、全文検索から外してほしいという申請がなされなかった場合どうなるのか。

 もしくは、複数の著者などが絡んで権利関係が複雑になっている書籍の場合はどうか。そのあたりを明確にしてもらわないと、賛同しにくい部分もある。「掲載してもいい」という書籍を申請してもらうのがいいのかもしれないが、それでは手続きが繁雑になってしまうので実現性に欠けてしまう。

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