Microsoftの「Exchange Server 2010」は、新インタフェースでGmailなどのクラウドベース製品に対抗しようとしている。企業ユーザーが求める管理機能も強化された。(画像による新機能紹介付き)
この3年間、電子メールおよびインターネットのコミュニケーションの世界は大きく様変わりした。Google Gmailに代表されるクラウドベースのサービスやWebベースのメッセージングソリューションは、個人ユーザーおよび企業(特に中小企業)の間でメッセージングに対する見方を変えるものとなった。
しかし中小企業では電子メールニーズを処理するためにGmailなどのサービスを利用し始めたものの、大企業では相変わらずエンタープライズクラスのメッセージングシステムを必要としている。社内アプリケーションと連係でき、高度なセキュリティを提供し、データ保持とコンプライアンスの要件を満たすことが可能なシステムが大企業では求められているのだ。
これは、Microsoftがメッセージング・コミュニケーションプラットフォームの次期バージョンの開発で直面している課題である。現行版のExchange Server 2007は2006年にリリースされた。Exchangeの次期版は、分散化、クラウド化、モバイル化が進む新しいメッセージングの世界に適応すると同時に、企業が求める中核機能を提供しなければならないのだ。
eWEEKラボでExchange Server 2010の最初のβ版(最終版は年末にリリースされる予定)をテストした結果から判断すれば、Microsoftはこれらの要求をうまくバランスさせる方向に進んでいるようだ。
Exchange Server 2010には画期的な新機能がたくさんあるわけではないが、従来バージョンの欠点に対処する改善が数多く盛り込まれている。Exchange Server 2010のβ版では、ホスティング型メールシステムと社内メールシステムの両方の利点を活用したいという企業、Exchangeの管理に関連したヘルプデスクの無駄なコストを削減したいと考えている企業、そしてMicrosoftのOSやWebブラウザを使っていないエンドユーザー向けの機能が搭載された。
ほとんどのエンドユーザーにとって、Exchange Server 2010における最大かつ最も顕著な特徴は、大幅に改善されたWebメールクライアントの「Outlook Web Access」だろう。最もうれしい新機能は、このWebメールクライアントがMozillaのFirefoxやAppleのSafariなどのWebブラウザでも、MicrosoftのInternet Explorer(IE)の場合とほとんど同じように動作するようになったことだ。FirefoxやSafariのユーザーは、例えばチェックボックスや次画面移動用の矢印ボタンなどを使わなくても、画面を下にスクロールしてメッセージ全体を表示したり、右マウスボタンのメニューを利用したりできるほか、フル機能版のOutlookクライアントが提供するのとほぼ同じ機能を利用できる。
基本的にOutlook Web Accessクライアントの動作は、フル機能版のOutlookクライアントとほとんど同じであり、ポップアップTips(例えば、メッセージのサイズが大き過ぎる場合などに表示される)や、名前を入力する際に連絡先候補を表示する機能なども同じである。
企業にとってOutlook Web Accessクライアントで最も歓迎すべき新機能は、管理タスクをユーザーに委ね、より多くの自己ヘルプオプションをユーザーに提供することを目的とした機能である。これにより、ヘルプデスクへの問い合わせ回数を減らすことができるからだ。
Outlook Web Accessクライアントの「Options」リンクをクリックすると、Webベースの「Exchange Control Panel」が表示される。ユーザーはここで、連絡先情報を更新したり、受信ボックスのルールを定義するといった基本的なセルフサービスタスクを実行できる。さらにこのコントロールパネルでは、ITスタッフに頼まなくても、ユーザーが独自のパブリック配信グループを作成したり、メッセージの配信状況を追跡するといった高度な機能にアクセスすることができる。管理者からユーザーに与えられたロールに応じて、エンドユーザーがこの機能を利用して会社のパブリックメーリングリストを管理することもできる。
またOutlook Web Accessインタフェースでは、Exchange Server 2010の新しいロール機能を利用して、管理者が各種機能をエンドユーザーに委ねることができる。その中で最も興味深いのは、複数のメールボックスの検索を可能にする機能で、これにより、例えば人事管理担当者やコンプライアンス担当者は、複数のメールボックスにまたがって情報を素早く検索できる。こういったロール機能を利用すれば、Exchangeコントロールパネルを通じてアクセス可能なほとんどすべての機能を特定のユーザーが有効/無効に設定できる。
管理機能に関しては、従来バージョンと同様、Exchange Server 2010では標準のMicrosoft Management Consoleインタフェースを通じてほとんどの管理タスクを実行することができる。しかしウィザードなどのツールも多用されており、多数の基本的なExchange設定を簡単に構成できるようになっている。
「Exchange Federation Gateway」機能は、企業が社内のインプリメンテーション間で、あるいはホスティング型Exchange Onlineシステムを通じて、Exchangeデータを簡単に共有することを可能にする。例えば、2社のパートナー企業との間で予定表を共有すれば、会議スケジュールをスムーズに調整することができる。
ユーザーのメールボックスを移動する作業も非常に簡素化され、テストではエンドユーザーのアクセスをあまり中断せずに、ユーザーのメールボックスを素早く移動できた。
「Database Availability Groups」機能では、複数のサーバ(社外サーバを含む)に対するデータベースレプリケーションサービスを簡単に構成することができた。データベースサーバをダウンさせた後で行った基本的なテストでは、サーバはシームレスかつ自動的に復旧し、メッセージは1つも失われなかった。
「Transport Protection Rules」機能を利用すれば、管理インタフェースからカスタムルールを作成し、特定のメッセージを社内でどのようにルーティングするかをコントロールできる。例えば、特定のメッセージに対して「非転送」ルールを適用するといった具合だ。この機能を「Windows Rights Management Services」と組み合わせて、一部のメッセージに対してDRM(デジタル権利管理)方式の高度なコントロールを適用することも可能だ。
Exchange Server 2010のβ版では、Exchangeの安定性を向上するとともに、さまざまな組織での利用を容易にするための内部的な変更も幾つか施されている。そういった変更の1つに、標準の直結型ディスクを使用する非SANストレージインフラへの対応が改善されたことがある。
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