調査の結果、Force.comではオンプレミス型環境と比較して開発時間の短縮と運用サポートコストの削減という利点があることが分かった。
米独立系調査会社Nucleus Researchが実施した調査の結果、米Salesforce.comのクラウドベースの開発プラットフォームであるForce.comを利用する開発者は、Javaや.NETを使用するのと比べて最大5倍の速さでアプリケーションを作成できることが分かった。
この調査は、クラウド内のアプリケーション開発環境を従来のオンプレミス(自社運用)型アプリケーション開発方式と比較したものだ。両開発環境を利用した経験のある17社の企業を対象とした詳細な調査の結果、Force.comでは開発時間の短縮と運用サポートコストの削減という利点があることが分かった。Nucleusによると、開発者はJavaや.NETを使用する場合と比較して、4.9倍も迅速にアプリケーションを提供できることが調査で明らかになったという。
Nucleus Researchの調査担当副社長、レベッカ・ウェッテマン氏は「掘り下げた調査の結果、クラウドコンピューティングがカスタムアプリケーション開発のコストと時間の基準を劇的に変えつつあることが分かった」と話す。「迅速な価値創出、低いコスト、運用の柔軟性というメリットを提供するForce.comは、カスタムアプリケーション開発の選択肢の1つとして普及が拡大するだろう」
Salesforce.comでプラットフォーム製品マーケティングを担当するシニアディレクター、アリエル・ケルマン氏は「顧客が当社の開発環境で成功しているのは喜ばしいかぎりだ。クラウドおよびForce.com上で開発するメリットは数値化できる。従来方式よりも5倍迅速に、そして半分のコストでアプリケーションを開発できるのだ」と話す。
ケルマン氏によると、その理由の1つとして、Force.comでは開発者がインフラ(ハードウェアおよびソフトウェア)をセットアップするのに必要なコストと労力を省略できることがある。「初期投資が不要なクラウドモデルでは、素早く開発に着手できる」と同氏は語る。またForce.comは、特定のタイプのアプリケーション――主としてエンタープライズアプリケーションに主眼を置いているという。
また、Salesforce.comは、開発者用の既製コンポーネント(多国通貨対応コンポーネントなど)も作成した。「このためForce.comで開発する作業は、80%がマウスのクリックで、コーディングは20%にすぎない」とケルマン氏は話す。「開発者が記述するコードは、自社の独自のIP(知的財産)に関する部分だ」
Salesforce.comのマーク・ベニオフCEO兼会長は「企業はアプリケーション開発でクラウドの利用を拡大している。Force.comプラットフォームは、エンタープライズクラウドコンピューティングに直接的なメリットをもたらす」と発表文で述べている。
米出版社Author Solutionsのジェームズ・スタンリーCIO(最高情報責任者)は「12万タイトルを超える書籍の出版を通じて培ったノウハウを持つ当社がForce.comプラットフォームを利用して開発したシステムは、当社のビジネスを変革しつつある。当社のForce.comプロジェクトは予算の枠内に収まり、予定よりも早く完了した」と話す。
Nucleusの報告書は、Force.comでは従来の開発環境よりも迅速な開発が可能になる理由を幾つか挙げている。
米Schumacher GroupでCIOを務めるダグ・メネフィー氏がeWEEKに語ったところによると、同社ではForce.comを利用することで、アプリケーション開発に必要な時間と経費の両方を削減できたという。Schumacher Groupは全米各地の病院への緊急医師派遣を業務とする企業で、約350人の医師を抱え、700人の職員が業務運営に当たっている。メネフィー氏によると、Schumacherのスタッフ採用システムと業務データベースはSalesforce.com上で稼働しており、同社ではほかのSalesforce.com技術も利用しているという。Schumacherは4年前からSalesforce.comのユーザーだ。
「当社のWebサービスチームがSalesforce.comのプロジェクトを利用した場合、オンプレミス型ソリューションよりも2〜3倍のスピードアップを実現できる」とメネフィー氏は語る。プロジェクトに投入する開発者の数も半分で済む。メネフィー氏によると、.NETベースのオンプレミスアプリケーションの開発で12〜14人の開発者を投入する必要があるプロジェクトの場合、Force.com環境を利用すれば6〜8人の開発者で間に合うという。
「これにはアプリケーションのアーキテクチャと組織構造が深くかかわっている。Salesforce.comのWebサービスは充実している。しかもクラウドを利用できるので、サーバ構成といった作業に労力を費やす必要がない」とメネフィー氏は話す。
さらにメネフィー氏によると、Schumacherは2009年末までに、自社のIT環境の70%をクラウド内で運用する予定だという。「クラウドベースのシステムは、当社のオンプレミス型ソリューションのパフォーマンスをしのいでいる」(同氏)
Schumacherにとって、クラウド環境の魅力はそれだけではない。同社はルイジアナ州ラフィエットに本社を置く。「当社の場合、事業継続は重要な問題だ。本社はメキシコ湾から40マイルしか離れておらず、ハリケーンの季節が来るたびにオフィスを閉鎖しなくてはならないのだ」とメネフィー氏は話す。Salesforce.comのクラウド環境を利用すれば、こういった問題による影響を軽減できるという。
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