クラウドって何だ――流行り言葉に隠された真実伴大作の木漏れ日(2/3 ページ)

» 2009年06月05日 16時08分 公開
[伴大作,ITmedia]

「所有」から「利用」の潮流は不変

 それでも「話題先行」というそしりを逃れない。これが知人のベンダーの「お偉いさん」が指摘した点だ。

 GoogleやIBM、Microsoftという巨大企業が参入を発表したが、Googleが自社で構築したコンシューマー向け検索エンジンの用途以外で、商用で用いられる例はあまりない。IBMのサービスは既に開始されていると聞くが、実際に利用している人を発見するのは困難だ。

 わずかに「Amazon EC2」が2008年10月23日から正式運用開始となったが、そのAmazonも今年2月に5時間にわたる障害を引き起こした。

 Amazon以外の商用サービスとしては米Salesforce.comが有名だが、当初、日本郵政が採用を表明して以降、特別大きな採用事例は聞かない。上記以外ではSun Microsystemsも参入を表明しているが、結局どのようなサービスを行うのか料金体系はどの程度なのかという疑問には誰も答えていない。実に春の海のように茫洋としている。

 今のクラウドはいわば、遠くからはくっきりと見えるが、麓まで行って頂を見上げると霧でまったく見えない山のような存在だ。現在は誰もが理解できる状況にはないものの、クラウドの一般的な概念である巨大プラットフォーム上で似通ったアプリケーションを実行するというコンセプトは秀逸だ。それなら、個々の企業がそれぞれ支払っているICTコストを低減できる可能性は高い。

 しかも、そのサーバが論理的に自社だけのサーバに見えるようになっていたら、自社の中にサーバを置くのも、外部のサーバを利用するのと何ら変わらない。

 このように「所有」から「利用」への基本的な潮流は決して変わらないだろう。しかしながら、企業ユーザー、インターネットサービ提供者、システムインテグレーターなどがそれらに取り組もうとしない限り、それらは単に「絵に描いた餅」で終わってしまう。

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