メインフレームオルタナティブ伴大作の木漏れ日(2/3 ページ)

» 2009年07月02日 16時00分 公開
[伴大作,ITmedia]

「お金」だけで割り切れない

 大手企業ユーザーがコンピュータを導入したのは1960年代から70年代初頭にかけてだ。そのころ、開発の先頭にいた人たちはとっくに引退しただろうが、実務を担当した若手社員は現在、60歳代だ。彼らがメインフレームにつぎ込んだ情熱はまさに青春の思い出だったといえる。それだけに思い入れは人並み以上だ。

 導入からおよそ40年近くが経過し、彼らの多くは既に退職したか、関連会社に移っているだろう。しかし、その場合も、情報システム子会社にいることが多い。彼らは採用される時点から特別扱いを受けていて、ほかの部署に異動というのも難しかったからだ。その結果、一貫して企業のシステムを見続けている場合が多い。結果として、メインフレームは一種のブラックボックスになった。彼らの後ろにはメインフレームのベンダーとSE地域子会社が付いている。

 安易にメインフレームをリプレースしようとすれば、メインフレームの知識しかない彼らに引導を渡すのと同じだ。それがもし地方なら、地域経済にも大きな影響を与えかねない。

 昨今はほかのオープン系サーバと同様に、メインフレームのハードも価格低下が著しい。ハードが安くなっても、プログラムを手組みする必要性は相変わらず残るが、メインフレームで処理している業務の重要度は相対的に低くなってきている。新しいアプリケーションはオープン系のシステムで構築することが多いからだ。メインフレームは負の遺産としてこのまましばらく使い続けようと経営陣が判断したとしても、それはそれで正しい判断といえるかもしれない。

 ただし、メインフレームのリプレース問題は、「安くなる」とか「将来性がどうか」で済むほど単純な話ではないのだ。

具体的な将来像を描けない日本の企業ユーザー

 今年の初めにJUAS(日本情報システムユーザー協会)の細川専務理事と日本の大手企業ユーザーの情報システム部門がどのような考えを持っているのかを聞く機会を得た。2008年から、先進ユーザー企業のCIOへ取材をしているが、確かに一部には全社的な視点を持ち、海外の競合企業を見据えながら自らの将来展望を持っている人もいる。しかし、それはほんの少数にすぎない。

 昨今、CIOというポジションは「出世の階段」に組み込まれているという話だが、多くは「2、3年お勤めを果たす」程度の意識でCIOの役割を担っているようにしか見えない。

 もちろん、そんな短期間で全社のシステムを完全に理解するなど不可能だ。従って、海外の企業はCIOとして外部から専門家を雇い入れる仕組みを採用しているケースが多い。ICTに関する将来の方針はCEOが先導し、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)、CIO(最高情報責任者)の4人で決定するものなのだ。

 ところが、日本では、情報システム部門という「特殊社会」で育ってきた人が、長年の付き合いという束縛に苦しみながら、経営サイドから特に指示もないままにシステムの将来像を描くという非常に難しい立場に置かれる場合が多いのだ。

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