仮想化より緊急かも?――今こそ取り組むPC管理の改革Next Wave(1/2 ページ)

社内に分散配置したPCはユーザーニーズが複雑化するに従って管理の手間とコストが肥大化。管理者もそれを認識しながらも本格的な改革に着手してこなかった。PC管理の専門家は今こそ見直すべき時だと断言する。

» 2009年08月25日 15時51分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

PC管理はなぜこれまで放置されてきたのか

 日本のオフィスワークで利用が始まっておよそ15年を経過したPCは、ワークスタイルや業務効率を大きく向上させてきた一方で、導入黎明期から各企業が独自の運用方法を模索し、管理手法も統一されないままになっていることはあまり注目されていない。情報システム部門の関心は、サーバやネットワーク環境の運用・管理に向けられ、仮想化や統合などで大幅な見直しが進んでいるものの、PCの運用管理はなぜかおざなりにされてきた。

 その理由は幾つかあるが、PCは社内の隅々にまで物理的に散在し、正確な実態を把握しづらいということや、設定や保守のバリエーションが著しく多様であることからサーバやネットワークと異なる管理手法が必要とされること、また効率的な管理を推し進めようとしても、従来のやり方を変えたがらないユーザーの強い反発もあり、結果的に放置されてしまったというのが実態だ。

「これまで企業は複雑化したPC管理の改革を多忙を理由に逃避してきたが、今こそ見直す時期に来ている」と語る野村総合研究所の岡崎誠氏

 「実はそこに大きな無駄が隠れており、経営者も情シス部門も気づいていないことが多い」と指摘するのは、野村総合研究所(NRI)の基盤ソリューション事業本部で基盤ソリューション事業3部長の主席コンサルタントを務める岡崎誠氏だ。PCの運用管理が手間・コストとともに肥大化傾向にあり、それが企業のITコストを圧迫し始めているという同氏は、

 「これまで改革や改善がされてこなかったということは、反対に効率化の余地が大きいと見ることができる。今こそPC管理に改革というメスを入れるタイミング」と語る。

管理業務が複雑化・肥大化するPC運用の現状

 ひとくちにPC管理といってもその内容はさまざまで、とにかく人手が掛かる。大量にPCを保有する大企業の場合、維持管理業務の一部を外部の委託業者のアウトソーシングしているケースも少なくない。

 自主管理にしても外部委託にしても、PCに関しては導入時の管理手法が引き継がれる傾向があり、手続き申請や承認行為の多重化などで複雑化し、トラブルがあるたびに業務プロセスが追加され、むしろ管理業務が肥大化しているのが現状だという。

 では、企業はPC管理を放置しているのかといえば、そうばかりとは限らないらしい。岡崎氏はさまざまな企業事例からPC管理の現状を示す。PC管理を見直した企業の1つ、製造業A社では、情報子会社をベンダーに売却した際に交換条件としてフルアウトソースしたことの反省により、PC管理の個々の要素に最も適したアウトソーシング先を分散するなどセレクティブソーシングを実施した。

 運輸業B社では、反対に人手が掛かるPCの現地作業コストの削減を目指し、自動化による付加価値のある運用サービスを求めて最適な運用委託先を選定。

 製造業C社も、1万台以上PCを抱え自前で運用を行っていたため、ユーザーへのサービスレベルの低さが課題だった。経営サイドからはユーザーがPCにかかわっている時間の増大が問題と見て、アウトソーシングを推進した。

 一方、PC管理の必要性は認めながら改革を進められなかった企業もある。金融機関D社では、経営層は改革推進派だったが、管理職は現場の抵抗を懸念して改革に二の足を踏んでいた。結局は表面的で中途半端な改革にとどまった。

 運輸業のE社も経営層は改革推進で、トップダウンによる改革の計画を策定したものの、現場は現状を変えたがらない。改革担当が移動したことを契機に計画が頓挫。

 公共のF社は経営側からコスト削減の圧力が強かったのだが、現状の情報子会社が関係会社のため切り捨てが決断できずプロジェクトが停滞してしまったという。

PC障害対応、PC申請対応、PC資産管理が3大PC管理といわれるもの。それ以外にもさまざまな管理項目と付随する業務が存在する(出典:野村総合研究所)
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