コラム
» 2009年08月25日 15時51分 公開

Next Wave:仮想化より緊急かも?――今こそ取り組むPC管理の改革 (2/2)

[富永康信(ロビンソン),ITmedia]
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PC管理改革を阻む3つの要因

 これらから、PC管理改革を阻む3つの要因が見えてくると岡崎氏はいう。1つは、そもそもPC管理の改革のやり方が分からないこと。ベンダーに改革を求めても、メリットがなければベンダーも自主的には動かない。2つ目は改革によるリスクやトランジション(移行)コストへの懸念。体制を替えることによってトラブルが増加したりリードタイムが長期化したりすることの心配や、移行コストを改革後にペイできるかどうかの不安もある。そして3つ目は、改革によるユーザー影響の懸念。情報システム部門は伝統的に現場ユーザーに弱い立場にあり、ネガティブなユーザー影響を回避したがる傾向があるという。

 では、具体的な改革の方法だが、岡崎氏はユーザーに影響が出ない範囲で行う内部改革と、積極的にユーザーに影響を受け容れてもらう外部改革とに分けて整理してみるとよいという。

 内部改革とは、まず自分たちがどの状況にあるのかを把握すること。例えば、図にあるようなCOBIT成熟度モデルなどの指標を利用するのも1つの方法。

 「問題をかかえる企業はレベル2前後が多い」という岡崎氏は、ドキュメントは離散的で書式・記述深度もまちまち、属人的かつスキルに依存した業務形態が多いと分析する。そこで業務フローを記述してみることで、どこに無駄があるのかを把握し、その上でPC管理体制を統廃合してコスト削減を実行すべきとアドバイスする。

 また、自社のコストの現状を知ることも重要だ。NRIが2007年に実施PC運用に関するアンケート調査によると、年間におけるPC1台あたりの管理コストの平均額は、およそ2.3万〜2.4万円程度となり、月に2000円あたりが平均相場となっているようだ。サービスレベルによって変動するが、自社の現状の管理コストを把握することも指針になる。

内部改革を進める上で有効に活用できる成熟度指標と企業の評価軸(出典:野村総合研究所)

事実のデータを公表し実態のないクレームに対応

 次に外部改革の進め方。岡崎氏は、エンドユーザーからのクレームは、本当のエンドユーザーではなく、実態をよく知らない代表者(役員や上級管理職など)がユーザーの意見を大げさに誇張する傾向があるとし、また職場のとりまとめ役となる人は職場での摩擦を恐れ、情報システム部門からの依頼をエンドユーザーに伝えたがらない傾向にあるという。これでは、双方とも実態が分からないまま改革を進めせざるを得ない。

 どこで、情報システム部門はインシデントの記録や利用状況が把握できる仕組みを使い、事実(PCを使っていないなど)のデータを収集するとともに、エンドユーザーと直接話すルートを確立して短周期かつ継続的にユーザー満足度調査を実施することで、それらを公開し説得材料にするのが重要だという。

 それにより、誇張され、あるいは間違ったクレームに対して、正しいデータ(サポートに時間がかかりすぎるのではなく、承認行為に時間がかかっているなど)を証明し納得してもらう。

 しかし、外部改革は少なからずユーザーには影響を与える形となる。そこで、改革後のメリットと引き替えにユーザーを説得するのも効果的という。例えば、「設置後の設定を自動化するので」→「PCを自分で設置してください」とか、「対応を早くするので」→「PCを取りに来てください」といったテクニックだ。

 また、トランジションコストはどうしても避けられない。しかし、現状の厳しい経済状況でまとまった予算を捻出することも難しい。そのため、現状の運用費用とコスト削減額の差異を利用し、トランジションコストをサービス開始から一定期間をかけて平準化するプランで進めるケースも増えているという。

月次で簡単なCSアンケートを実施するのも効果的な方法。ネガティブ回答から施策を実施し、その施策が正しければクレームが減少しコストダウンという結果が必ず表れるという(出典:野村総合研究所)

ミドル層に本気で改革する覚悟はあるか

 具体的な改革の進め方は大きく3つあるという。1つ目は、小規模の改革・改善での推進を前提とする現状体制維持型改革。既存のコントローラーと既存のベンダーの体制のまま改革を行うため、リスクは低いが効果もイマイチ。2つ目は、大幅な改革やコスト削減を志向するゼロベース型改革。コントローラーやベンダーをすべて替えるため、リスクは大きいが効果も短期に大きく出る。そして3つ目は、大きな改革を目指すがユーザーインパクトを最小限にしながらソフトランディングを目指すチェンジマネジメント型改革。コントローラーを替えるが、必要に応じてコスト競争力のあるベンダーに替える。リスクは抑えながら効果を最大にできる。NRIではこのチェンジマネジメント型改革をベースにしたサービスを開発し、情報システム部門の視点でPC管理の改革を進めているという。

 どれを選択するかは、各社のお家事情で判断するしかないが、トップダウンだけでは改革は進まず、ミドルクラスの役割が大きいと指摘する岡崎氏は、「ミドル層が本気で改革する覚悟を決めて実施している企業はほぼ成功している」と語る。

PC運用の改革は、多くの場合2年ほどの時間をかけて最適化していくもので、重要なのはマネジメントの意志がぶれないことだという。とたえユーザーの反発にあってぶれたとしても、調整しながら理解を得ていくマネジメント力が成功のカギとなりそうだ。

企業の改革ポリシーに従った改革の進め方(出典:野村総合研究所)

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