データベースの仮想化、データベースに適応したストレージの仮想化や圧縮、これらはクラウドコンピューティングにおけるプラットホームとしての要件だ。これ以外にも、クラウドで利用するアプリケーションからの要件もある。それが、マルチサービス、マルチテナントへの対応だ。
クラウド上に1つや2つのアプリケーションしかなければ、それぞれに別々のデータベースを起動したほうが運用管理作業は楽かもしれない。しかしながら、クラウドでは通常多数のアプリケーションを動かすことになる。それぞれに専用のデータベースが稼働してしまうと、管理の手間は膨大となる。
マルチサービス対応というのは、稼働させるアプリケーションごとに専用データベースを立ち上げるのではなく、1つのデータベースで複数のアプリケーションを稼働させて効率化するというものだ。このように、多くのアプリケーションを稼働させてもそれに耐え得る機能、性能が、クラウドで利用するデータベースには求められるのだ。
例えば、セキュリティの管理を考えた場合にも、個々のデータベースごとに逐次セキュリティ設定を行い、それを管理するとなれば複数のデータベースが稼働していては大変な手間だ。これが1つのデータベースであれば、基本的なセキュリティ設定は1つだけを管理すればいい。
そして、階層的にアクセスコントロールをきめ細かく設定できるようになっていれば、個々のユーザーごとの設定も管理しやすくなる。また、仮想的にデータベースのテーブルなどを分離し、ユーザー専用の領域を確保できる機能もがあれば、ユーザーごとにデータベースのインスタンスを立ち上げるよりもはるかに効率的にリソースを活用できることになる。
さらに、マルチテナントへの対応だ。複数ユーザーが同じクラウドサービスを利用している状況で内部統制を確保するとなると、アクセス権限を厳密に分離できなけばならない。ほかのユーザーのデータ領域には絶対にアクセスできないのは当たり前であり、さらにクラウドサービスの管理者であってもユーザーのデータには基本的にはアクセスできないといった、きめ細かな職務分掌機能が求められる。
ここまで見てきたクラウド時代のデータベースに求められる仮想化機能やマルチサービス、マルチテナントへの対応機能は、ある程度規模の大きなクラウドコンピューティングに対応するために必要となるものだ。
そのため、Salesforce.comのように世界規模のクラウドサービスを展開するであるとか、大手企業やそのグループ企業で利用するプライベートクラウドや、業界、業種で共有するシェアードサービスセンターなどの構築を目指す場合には必須となるものだろう。現状はそれほどの規模に至っていなくても、将来的にそういったシステムの形態を目指すのならば、現時点から将来的なクラウドに求められる高い要求に応えられるデータベースを選んでおくのが得策だ。
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