次世代のFirefoxがもたらす「Webの民主化」と「Super Power」Focus on People(1/2 ページ)

Mozilla Labsのエイザ・ラスキンと、Mozilla Corporationのクリス・ブリザード。Mozillaの至宝ともいえるこの2人が、Jetpackの紹介にはじまり、未来のブラウザ像を想起させるアイデアまでつまびらかに語った。

» 2009年11月25日 00時00分 公開
[june29,ITmedia]

はじめに

 こんにちは! 昨年の11月、Mozilla Labsエイザ・ラスキン(Aza Raskin)が来日した際に、インタビューを担当して記事を書かせていただいたjune29です。今年もFirefox Developers Conference 2009に合わせてエイザが来日するということで、お話を伺ってきました。

 今回はMozilla Corporationでワールドワイド・エバンジェリストチームのディレクターを務めるクリス・ブリザードも一緒でした。現在、Mozilla Labsが猛烈にプッシュしているJetpackの紹介にはじまり、未来のブラウザ像を想起させるアイデアまで、たっぷりお話をお聞かせいただきました。

拡張機能の常識を塗り替える「Jetpack」は何がすごいのか

ラーメン大好きエイザ・ラスキン Mozillaの至宝、エイザ・ラスキン氏。筆者と同世代の彼はFirefoxの未来をけん引するキーパーソンです

june29 こんにちは! 1年振りですね!

エイザ こんにちは。あれから1年ですね。

june29 クリスははじめてですね。今日はよろしくお願いします。

クリス どうぞよろしくお願いします。

june29 では、まずはエイザとお話させてください。去年はちょうどUbiquityがリリースされた直後で、そのお話を聞かせてもらいました。今回はJetpackですね!

エイザ 既存の拡張機能の問題点を強く意識して作られたJetpackは、次の2つを特徴として持っています。1つは、「ブラウザの再起動を必要とせずに、新しい機能を取り入れられる」こと。もう1つは、「ブラウザのアップデートのたびに、バージョン整合性のチェックをしなくてもよい」ことです。

june29 ユーザーから見て、拡張機能を使用する上で煩わしい、ネックになっている部分ですね。

エイザ そうですね。開発者から見ても、拡張機能を開発するにはXUL(XML User Interface Language)を知らなければいけなかったりして、そう容易ではありません。本当は、もっと気軽に、簡単に、日常的に、ブラウザに手を入れられるようにしたいんです。HTMLとCSSとJavaScriptを知っていればWebページを作れるように、標準的な技術を用いて望む体験を得られるようにしたい。

 実世界にあるどんなものも、例えば携帯電話でも、ストラップをつけたりして、使い方に合わせてカスタマイズできます。Hackできることが重要です。Webの世界でも同じようにしたい。

june29 目指す場所は、Ubiquityのお話を聞いたときから変わっていませんね。

エイザ わたしたちには「Webを民主化する」というビジョンがあります。人びとがWebを取り返すんです。その実現のための方法は1つではありません。

Jetpackのロードマップ

june29 1時間あまりのインタビューで、これでもかというほどMozillaの未来を語っていただきました

june29 Jetpackが思惑どおりに普及したら、どういった変化が起こるでしょうか。

エイザ まず、拡張機能を開発する人たちのコミュニティーが活性化するでしょう。そうなってほしいです。そして、数十万人の開発者による、数百万のfeature(Jetpackにインストールされる1つ1つの機能)が生まれてほしい。

june29 そうなったとき、現在の拡張機能はどうなるでしょうか。

エイザ それについても展望があります。Firefox 3.7が出るころには、たくさんのJetpackベースの拡張機能が登場していてほしい。Firefox 4のころには、拡張機能をJetpackで置き換えたいと考えています。

june29 では、今現在、Jetpackで置き換えることができる拡張機能は、どれくらいあるでしょうか。

エイザ んんー、全体の5%くらいでしょうかね。

june29 なかなかシビアな数字ですね。

エイザ 現在のバージョンでは、バイナリコンポーネントを扱うことができません。ツールバーやロケーションバーも操作できない。これから1つずつ対応を進めて、早くユーザーに「Super Power」を贈りたいです。

june29 それはとても楽しみです。

エイザ Add-ons for Firefoxのような、Jetpackのfeatureを並べたギャラリーも作ります(編注:『Jetpack Gallery』のこと)。繰り返しですが、featureを試すために、ブラウザの再起動のような面倒な操作は必要ありません。ちょうど、ボクらがブティックに行って、目に留まったジャケットを羽織って試すぐらいの感覚で、それぞれのユーザーが自分に合ったものを見付けられたらいいですよね。よりパーソナルなWeb体験を届けたい。

june29 あれこれ選びながらブラウザを自分好みにできるということですね。

エイザ ええ。Webのように広まる拡張機能を目指しています。

june29 「Webのように」というと、feature同士が連携して、小さな機能が組み合わさって大きな機能を成すような印象を持ちましたが、そのような発展もあるのですか!

エイザ 案としては、各featureにRESTfulなAPIを用意することを考えています。

june29 わくわくしますね!

エイザ まだアイデア段階ですけどね(笑)。いずれにせよ、Jetpackで特別に複雑なことをしようと考えているわけではなく、標準的なWebの技術で利用可能なものを組み合わせるだけです。Webが良くなった分だけ、JetpackもFirefoxも良くなる、そんな関係を目指しています。

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