わたしは、1.子どもが助けを求めてくるまで待つこと、2.子供と日々、自然なコミュニケーションをとること、3.子どもが言いやすい場をタイミングよく用意すること、の3つをサトルくんのお父さんに提案した。
それ(いじめ)を子どもが自分で解決できるか、本当にいじめなのかを親の基準では判断できません。いじめなのかどうかは、子どもがどの程度悩んでいるかが判断基準だからです。
例えば、メールや学校裏サイトで、悪口を書かれていたとしても、子どもが「いじめだ」「苦痛から解放されたいが方法が分からない」と思っていなければ、大人は何もしないほうがいいのです。
子どもは、子ども同士のけんかに、親が中途半端に干渉することを嫌がりますし、信頼できない親が、「子どもを管理したい」「自分の思う通りに動かしたい」という欲求を満足させるために、介入してくることは不快でさえあります。
『子どもをネットから守り、ネットで育てる』より
基本的に、子どもは自分がいじめられていることを「恥ずかしいこと」だと思っている。だから、親は子どもに話すきっかけを与えなくてはならない。
さらにわたしは、以下をお父さんに提案した。
いじめはつらいかもしれませんが、乗り越えれば必ず新しい生きがいや楽しいことがたくさん待っています。しかし、いじめを受けて、つらい毎日を送っている子どもはそれに気がつきません。ですから、お父さんの力が必要なのです。
厳しい社会の中で戦い、傷つきながらも家庭を守ってきたお父さんだからこそ、生き抜く方法と人生の楽しみ方を子どもに教えることができるとわたしは信じています。そして、子どもの心をいやす家庭を作れるのも、やはりお父さんです。
「いじめは、一生続くわけではないこと」「独りで考えずに、お父さんの力を借りて一緒にいじめを忘れるぐらいたくさんの行動をとれば乗りきれること」「お父さんはどんなことでさえ受け入れて冷静な対処ができる器を持っていること」を子どもに日ごろから感じさせ、とにかく最悪の事態を回避することに注力してほしいと思います。
『子どもをネットから守り、ネットで育てる』より
お父さんはまず、サトルくんが話しやすい場を作ることを考えた。最終的には、近くのラーメン屋で話をすることにした。
「『北の国から』というドラマで、お父さんと子どもがラーメンを食べながら話をするシーンがあって、それが頭に浮かんだんです」とお父さんは照れくさそうに話した。それを聞いてわたしは、これはうまくいくと感じた。
子どもは、「お父さんの肩車で、花火やエレクトリカルパレードを見る」「誕生日にロウソクが立った丸いケーキがあって、家族がハッピーバースデーを歌う」「寝る前に、お父さんが布団で寝るまで本を読んでくれる」などの典型的な幸せな風景やテレビに出てくるようなシーンに、安心感を覚えるからだ。
さらに、お父さんがサトルくんとどのように会話をするかについて話し合い、チームマネジメントのためにビジネスリーダーが利用するコミュニケーションスタイルの“コーチング”“ストレートトーク”の2つを応用して使ってみることを提案した。
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