米国勢に後れをとっているとみられる日本のクラウド技術。これから劣勢を押し返すほどの新技術を生み出すことはできるのか。
2010年に入って企業や自治体がクラウドコンピューティングの導入に取り組み始めたという話を数多く聞くようになった。クラウドサービスを提供するICT(情報通信技術)ベンダーはぜひとも追い風に乗りたいところだが、一方で中核となる技術やサービスの仕組みは米国勢が先陣を切り、日本勢は後塵を拝しているとみられている。
果たして日本勢は、今後そうした劣勢を押し返すほどの新技術を生み出せるのか。この疑問を、富士通研究所が2月23日に開いた新技術の記者会見でぶつけてみた。
富士通研究所がこの日発表したのは、クラウドシステムの障害予兆の検知から障害原因の絞り込み、さらに障害解決までの処理を自動で実行する新技術だ。詳細はすでに報道されているので他稿に任せるとして、ここでは同社の近間輝美常務取締役が新技術の発表に先立って説明した今後のクラウド利用形態の進展について紹介しておきたい。
近間常務がまずキーワードとして挙げたのは「ヒューマンセントリックなネットワーク社会」。人を中心としたICTの利用形態で「全てをつなぐことで価値を生み出し、人々に感動、発見、信頼と発展を提供する社会」だという。
ちなみに、感動については「人々とICTが寄り添うように助け合い、今までにない喜びと感動を紡ぎ出す社会の実現」を、発見については「大量のデータから複雑な状況を分析・可視化することで、グリーンで住みやすい社会を実現するための情報提供」を主眼とし、グリーンでセキュアなICTが信頼性と発展性を備えた社会を支えていくとしている。
そして、「こうしたヒューマンセントリックなネットワーク社会を実現していくためのインフラとなるのがクラウドだ」と強調した。感動、発見、信頼と発展といった言葉が並ぶと少々抽象的に聞こえるが、目指す社会のありようをこうした言葉で示すことは非常に重要だ。技術もまずは理念ありきである。
では、クラウドを活用したヒューマンセントリックなネットワーク社会の勘所はどこにあるのか。
「今後、クラウドは実社会で起こるさまざまな事象に対し、状況に応じたサービスを提供するとともに、そうした事象の情報をセンサーなどで収集・分析して知識として蓄え、それを知恵に変えて提供することが求められるようになる」(近間常務)
つまり、状況認識と集合知の活用で価値を創造し、最適な行動を支援するのが勘所だという。
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