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» 2010年09月13日 08時00分 公開

デジタルPRの仕掛け方:iPadは自社メディアになるか――「情熱の系譜」と効果測定 (2/3)

[野崎耕司(ビルコム),ITmedia]

数値でKPIを管理できるというデジタルPRの強み

 1年目の目標を「社名認知」「業態認知」と掲げ、情熱の系譜プロジェクトは動き出した。その成果は「トリプルメディアを駆使、『情熱の系譜』」舞台裏」で紹介した通りだ。では同社はこのプロジェクトの効果をどのように測定しているのだろうか。

 効果測定の指標は「リーチ数」である。これは、同プロジェクトを通して達成すべき社名/業態認知率の達成度合いである。協和発酵キリンは過去に実施した社名/業態認知率の調査結果から最終的なリーチ目標(到達目標)を設定し、それを週次の目標に落とし込んで管理している。数値による施策の判断は、プロジェクトの客観的な把握に寄与する。

 具体的に見ている数値は、プロジェクトを構成するテレビ番組「情熱の系譜」の視聴者数、Twitterの公式アカウント「@jounetsu_keifu」のフォロワー数、Twitterアカウントで募集した「情熱のフレーズ」のツイート数、公式サイトのページビュー、YouTubeの視聴数、「情熱の系譜 for iPad」のダウンロード数である。

情熱の系譜における各種KPI 情熱の系譜における各種KPI(出典:ビルコム)

情熱の系譜 for iPadの効果

 プロジェクトの具体的な効果を見ていきたい。特筆すべきは、情熱の系譜 for iPadのダウンロード数である。開始から約1カ月で1万超を記録したが、その後はゆるやかに推移した。しかしブログメディア「AppBank」が8月1日に同アプリを取り上げたことで、App Storeのランキング上位に並び、ダウンロード数は飛躍的に伸びた。その結果、約2カ月間で総ダウンロード数は2万に迫っている。

 協和発酵キリンは情熱の系譜 for iPadを「自社メディア」と位置付けている。このiPadアプリを通じて同社は、情報感度の高い利用者層(イノベーター層)に、“情熱の系譜”や”協和発酵キリン”を伝えていこうと試みた。情報発信力が高いターゲット層の口コミなどを通じて、プロジェクトが多くの人に広がっていくという効果も期待した。

 ブログを中心としたさまざまなメディアが、情熱の系譜プロジェクトを記事に取り上げ、iPadアプリのダウンロード数も増えていった。自社メディアの施策として始めたiPadアプリは、ソーシャルメディアの1つであるブログに伝播していく。ソーシャルメディアのリーチはマスメディアに劣るものの、特定の利用者層への影響力は大きい。

 情熱の系譜プロジェクトにおける大きな効果として、Twitter上で消費者とのやりとりが生まれた点も挙げられる。@jounetsu_keifuを通じて、番組に関連する内容をツイートしたり、フォロワーにリプライ(返信)をしたりしていった。そうすると、ツイートやリプライを積極的にしてくれるユーザーも増えていった。Twitter上でのコミュニケーションが活発になると、iPadアプリのダウンロード数をはじめとした数値も上昇した。

 自社メディア(iPad)、ソーシャルメディア(Twitter)、マスメディア(テレビ番組)を有機的に連携させた施策は、相乗効果を生み出した。6月末に実施した簡易調査(ビルコム調べ)では、社名の認知度が66%から71%に向上した。

 プロジェクト全体から見えたのは、デジタル環境が発達する中では、各メディアを活用した個々の施策は、独立して存在できないということだった。テレビ番組に感銘を受けた視聴者がTwitterで感想をツイートし、YouTubeに蓄積したコンテンツのアーカイブにアクセスする。iPadアプリを気に入った利用者はその内容をブログに書き、読んだ消費者はiPadアプリから番組を視聴するといった一連の流れが出来上がる。

 情熱の系譜プロジェクトは、トリプルメディアの各施策を有機的に結び付けるために、企業が一人一人のユーザーと真摯(しんし)に向き合い、PDCAを回しながら、継続的に活動を展開していくことの重要性を教えてくれる。

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