IT事業者の収益源である保守サービス市場が縮小アナリストの視点(1/2 ページ)

技術進歩や生産性の向上などにより、サーバをはじめとするハードウェアの価格が低下傾向にあり、連動して情報システムの保守サービス市場が縮小しているという。

» 2011年01月14日 08時00分 公開
[石塚俊(矢野経済研究所),ITmedia]

アナリストの視点」では、アナリストの分析を基に、IT市場の動向やトレンドを数字で読み解きます。


 保守サービスは、多くのIT事業者の収益源になってきた。それは、保守サービスが契約により一定の収益を確保できるストック型のビジネスだからである。ユーザー企業の多くも保守サービスに支払う対価には特に疑問を持たずに、支払いを続けてきた。

 しかしながら、現在、保守サービス市場は縮小を続けており、保守サービスを収益源にしてきたIT事業者は、事業構造の転換を迫られている。

 保守サービス市場が縮小しているのは、ハード単価が下落しているためである。メインフレーム(汎用機)を例に挙げると、メインフレームで構築されたシステムを、UNIXやWindowsなどのプラットフォームに移植するレガシーマイグレーションが進展したことで、出荷台数、出荷金額ともに減少している。オープン系サーバにおいても、IAサ−バの出荷台数こそ堅調なものの、低価格化が進行しており、それに連動して保守サービスの売上高も低下している。

 このように、テクノロジーの進歩や生産技術の向上などに伴い、OA機器やサーバといったICT機器全般の価格が低下傾向にあり、それに連動してハードウェアの保守市場が縮小している。

 2009年度の保守サービス市場全体は、前年度比6.4%減であり、さらにハードウェア保守サービスは、前年度比8.2%減と低調だった。

 保守サービス市場が縮小しているため、保守サービスを収益源にしてきたIT事業者の多くは、運用支援サービスに力を入れている。

 運用支援サービス市場は、コスト見直しの観点から、システムを自社による管理から、外部委託に切り替える企業が増加しており、拡大基調にある。特に低価格なリモートサービスやデータセンターサービスなどのオフサイトサービスに対する需要が高まっている。

 2009年度のサービス別で見ても、保守サービス市場が前年度比6.4%減であったのに対して、運用支援サービス市場は前年度比7.5%増と伸長した。

 当社では、保守サービスと保守ベンダーが提供する運用支援サービスを合わせたものを「保守サポートサービス市場」とし、図1の通り市場規模の算出および予測を行った。

 2009年度〜2015年度のシステム保守サポートサービス市場は、年平均成長率1.9%で推移し、2015年度には1兆2780億円に達すると予測する。

 ただし、サービス別では、保守サービス市場の年平均成長率はマイナス0.8%、運用支援サービス市場の年平均成長率は8.6%であり、運用支援サービスの成長が保守サービスのマイナスを補完する形で市場は成長すると予測する。

<strong>図1 システム保守サポートサービス市場規模推移(2009年度〜2015年度)</strong> 図1 システム保守サポートサービス市場規模推移(2009年度〜2015年度)

 注1:事業者売上高ベース

 注2:2009年度は実績値、2010年度は見込値、2011年度以降は予測値

 注3:システム保守サポートサービス市場規模は、保守サービス市場規模と運用支援サービス市場規模の合算値で算出した。ただし、運用支援サービス市場規模は保守ベンダーが提供するサービスのみを対象としている

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