噂は本当だった、放射線測定器のデタラメ萩原栄幸が斬る! IT時事刻々(1/2 ページ)

原発事故を契機に自身の手で放射線を測定しようという市民が増えている。安価な測定器には問題が多いというのが専門家の見解だったが、それを裏付ける調査結果が発表された。

» 2011年09月17日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

本コラムは、情報セキュリティの専門家・萩原栄幸氏がITとビジネスの世界で見落とされがちな、“目からウロコ”のポイントに鋭く切り込みます。


 東日本大震災後、急速に関心を集めた機器が幾つかあった。ショベルカーや浄水器、ロボット――そうした中でとりわけ一般の人々の間に広まったものが放射線測定器である。「政府が発表する放射線の数字が信じられない」「自分の周辺の汚染度を知りたい」といった理由からだ。通信販売では2、3万円ほどから手軽に購入できる安価な機器も多い。一般の人々が購入するようになった安価な放射線測定器に疑問を感じる専門家も多い

 先ごろ、この安価な測定器(10万円以下)の信頼性テストの結果が国民生活センターから発表された(PDFファイル)。今回はそのことを取り上げたい。さらに次回は“そもそも論”として、どうすれば信頼に足る放射線を測定できるのかについて、産業技術総合研究所や日本電気計測工業会の資料を基に解説したいと考えている。

友人のメールによると

 筆者は「環境化学科」で学んだ。その縁があって、この分野での人脈もある。その中の一人から次のようなメールを受け取った。

「実は同じサンプルを同じ条件によって放射線測定器(いずれも認証のない通信販売で購入したもの)で計測すると、予想通りボランティア団体や個人がよく購入しているものと、大学内の測定器での結果の数字にかなりのバラツキが見られた。想定される用途が違うのが大きな原因だ。専門家にとっては“当たり前”のことだが、一般の人に誤解が生じかねない。何とかならないか」

 筆者もこのように危惧していた。ある民放の番組で使用している一部の機器は、“そもそも論”として、こういう事態を想定したものではない測定器だった。テレビ画面から、トレーサビリティ(追跡可能性)が確保された確かな機器ではないと類推できる点もみられた。安価な測定器のほとんどが「中国製」もしくは「生産国不明」であり、国際的な基準を満たしているとは到底思えない「安さ」で売られている。そして、国民生活センターがその実態を調査した。

 国民生活センターの調査では、次の条件で製品を実際に購入し、調べた。

  1. 購入金額は1万円以上、10万円未満
  2. 購入時期は2011年6月〜7月
  3. 測定数字を読み取ることができ、繰り返し使用できる機器
  4. 購入先は楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!で「売れ筋」「おすすめ」など上位にランクされている機器
  5. 測定放射線は「放射性セシウム」(震災から5カ月が経過しており、半減期が短い放射性ヨウ素は対象外)
実際に購入した放射線測定器
番号 名称 製造国 価格
1 AK2011 記載なし 4万9770円
2 BS2011+ 記載なし 4万8825円
3 DoseRAE2 PRM-1200 記載なし 5万8000円
4 DP802i 中国 4万7700円
5 FJ2000 記載なし 3万6000円
6 JB4020 記載なし 3万8000円
7 RAY2000A 中国 3万7143円
8 SW83 記載なし 6万2000円
9 FS2011 記載なし 3万6800円

 また上記以外の参考品として、校正済み測定器である「TCS-171」(日立アロカメディカル製、58万8000円)でも計測している。

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