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» 2011年09月17日 08時00分 公開

萩原栄幸が斬る! IT時事刻々:噂は本当だった、放射線測定器のデタラメ (2/2)

[萩原栄幸,ITmedia]
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測定結果

 まず自然放射線の測定結果だ。ご存じの読者も多いと思うが、われわれの生活する環境には、常に微量の自然放射線が存在している。国民生活センターでは、安価な測定器がそうした微量の放射線を測定できるかを調べるため、通常の環境と鉛箱で覆って自然放射線の影響を受けにくくした環境の2つの条件で10回ずつ測定し、平均と標準偏差を求めた。(国民生活センター資料より抜粋)

 参考品のTCS-171は、通常環境では毎時0.06マイクロシーベルト、厚さ10センチの鉛箱で覆った環境では毎時0.01マイクロシーベルトと安定していた。安価な測定器での結果は、テスト対象品はいずれも参考品よりも高い値を示した。(3)、(8)、(9)以外は、10回の測定結果でバラツキが大きく、非常に信頼性に欠けることとなった。(5)は鉛箱で覆った環境の方が高い値を示すという状況である。これらの結果から、安価な測定器はいずれも、「毎時0.06マイクロシーベルト以下の低線量の放射線を正確に測定する性能はないと考えられる」と国民生活センターは結論付けている。

 次回で詳しく解説するが、1キログラム当たり500ベクレル(Bq/kg)の汚染がある食品を計測したとすると、約毎時0.007マイクロシーベルトの値になる。国民生活センターでの計測にあった毎時0.06マイクロシーベルトの10分の1程度だ。つまり、食品や飲料水などの暫定規制値である200〜500Bq/kgに該当する線量を、安価な測定器では測定できないということになる。

 次にセシウム137の校正用線源(測定器の校正に用いられる標準の線源)を使用しての測定結果だ。セシウム137に由来するガンマ線が毎時0.115マイクロシーベルト、毎時1.05マイクロシーベルト、毎時5.16マイクロシーベルトの3種類の線源を測定した。結果は、線源が強いほど測定結果の値が正味値(測定結果から自然放射線のバックグランドの値を引いたもの)でバラバラになり、正確な測定ができなかった。線量が最も小さい毎時0.115マイクロシーベルトでも、全ての製品で相対標準偏差が30%を超え(34〜203%)、9製品中6製品で100%を超えていた。


 誤解を恐れずに言えば、国民生活センターの調査結果からは少なくとも安価な測定器が「安かろう、悪かろう」となってしまう。しかし、筆者は安価な測定器を完全に否定するつもりはない。安価な測定器なりの使い道があると考えている。詳細は次回に述べたい。国民生活センターの結論の中で、重要なポイントと思われるのが以下の点だろう。

  1. 安価な測定器では食品や飲料水などが暫定規制値以下であるかどうかを測定できない
  2. 販売サイトの広告は汚染検査ができることを顧客に期待させる内容が多いが、実際にそのような検査をすると、数値の差が大きく、バラツキも多い。繰り返し測定しても、どのような数値を採用すべきか分かりにくい

 本当に精緻な値を測定したいのであれば、それなりの知識とそれなりの製品を必要とする。国民生活センターが参考品としたような機器だ。次回は後編として、放射線を測定する仕組みや計測器の注意点、また、何が「真値」なのかについて国際的な考え方を交えながら取り上げる。安価な計測器をどう活用すべきか――筆者の見解を述べたいと思う。


 前回の記事を掲載後、MD5の衝突耐性について追加の情報が寄せられた。記事でお伝えした以上の状況であるとのことで、ご指摘いただいた読者に感謝を申し上げたい。本稿はMD5を否定した当時の裁判(6年前)に対する筆者の感想を述べたものである。現状においてはさまざまな攻撃に対する脆弱性が発見されている状況では、やはり、MD5を推奨できないという持論は記載した通りだ。毎回、筆者の予想以上に読者からの反響があり、励みになっている。今後も精進していくので、引き続きのご支援を賜りたい。

萩原栄幸

一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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