「脱・炎上マーケティング」できるソーシャル活用とは?――ループス斉藤氏に聞く(1/2 ページ)

企業がソーシャルメディアを活用する上で、“炎上”のリスクは常に付きまとう。いかに炎上リスクを抑え、顧客との良好な関係を築いていくべきか。企業のソーシャルメディア活用支援を手掛ける、ループス・コミュニケーションズの斉藤徹氏に聞いた。

» 2011年11月22日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

 TwitterやFacebookをはじめとするソーシャルメディアの普及に伴い、企業においてもその利用価値が注目されつつある。だが一方で、広報やマーケティングなどの目的でソーシャルメディアを活用しようとした企業が“炎上”を引き起こし、結果的に企業イメージの悪化を招いてしまうといった事態も複数発生している。

 2010年2月には、UCC上島珈琲がTwitter上で実施したキャンペーンに対してTwitterユーザーからの批判が相次ぎ、2時間弱でキャンペーンを中止する事態が発生。また今年に入ってからも、8月には北海道長万部町のキャラクター「まんべくん」のTwitterアカウントのツイートに対して抗議が殺到し、アカウントを停止するなど、ソーシャルメディアを通じた炎上騒ぎが後を絶たない。

photo ループス・コミュニケーションズ社長の斉藤徹氏

 こうした中、「炎上のリスクを恐れ、ソーシャルメディアの積極的な利用に踏み出せずにいる企業も少なくない」とループス・コミュニケーションズ社長の斉藤徹氏は話す。だが斉藤氏によると、企業がソーシャルメディアの利用を控えることは本質的な炎上防止策にならないばかりか、炎上を防止したり鎮静したりするための機会を失ってしまうことになるという。

 斉藤氏によれば、ソーシャルメディアを通じた炎上には3通りある。まずは企業の公式アカウント担当者による「運用ミス」を通じた炎上、次に社員やアルバイトによるソーシャルメディアの私的利用をきっかけとして生まれる炎上、そして企業の商品やサービスそのものが引き起こす炎上だ。このうち企業がソーシャルメディアの公式利用を控えることで防止できるのは「運用ミスによる炎上」だけで、一般社員や顧客から自然発生的に生じる炎上は相変わらず脅威になるという。

 「公式アカウントの運用ミスによる炎上は、担当者を教育すれば簡単に予防できる。企業が本当に危惧すべきなのは、社員やアルバイトの個人アカウントによる炎上、商品・サービス自体が原因となって起きる炎上など、企業がコントロールしにくい部分での炎上だ。これらのリスクを減らしつつ、いざ炎上が起きてしまったとき適切に対処するためには、企業はむしろソーシャルメディアを積極的に活用して顧客と対話し、誤解のない信頼関係を築いていく必要がある」(斉藤氏)

顧客と信頼関係を築くためには

 ソーシャルメディアの普及に伴い、企業が顧客に対して嘘をついたり、自社にとって不都合な事実をごまかしたりできない「透明性の時代」が訪れていると斉藤氏は話す。

 「かつて企業にとっては、自社に利益のある情報を社外に発信し、都合の悪い情報を社内に閉じ込めて隠すという広報戦略が重要だった。しかしソーシャルメディアが普及した今、企業がいくら都合の悪い情報を隠そうとしても、そうした情報はたやすく流出し、消費者の口コミによってあっという間に広まってしまう。つまり、企業と消費者のパワーバランスが完全に逆転した」(斉藤氏)

 こうした状況下で企業に求められるのは、ソーシャルメディア上で自社の利益に直結しそうな情報のみを“発信”するのではなく、顧客の声を“受信”する側に回り、できるだけ多くの消費者と継続的なコミュニケーションを図ることだという。「自社にとって“完全”な情報を発信することは、もはや重要ではない。企業に今求められているのは、誠実で人間らしいやり取りを顧客との間で継続していくことだ」(斉藤氏)

 また、公式アカウントを用いて自社の商品やサービス、セミナーなどを宣伝しようとする企業について、斉藤氏は「絶対にやめるべき」と指摘する。「消費者はソーシャルメディア上で無数の情報から取捨選択をしているので、そこに企業の宣伝が入り込む余地はほとんどない。そのような宣伝は無視されるだけでなく、むしろ『売り込まれている』『食い物にされている』といった消費者の反感を引き起こしてしまう可能性すらある」(斉藤氏)

 だが現実には、自社発行のメールマガジンなどと同様の感覚でソーシャルメディアの公式アカウントで宣伝ツイートをしてしまっている企業が少なくないという。特に、公式アカウントの運用を担当していない管理職などの人物ほど、公式アカウントのフォロワーの数を見て「広告に利用できるのでは」といった思考に陥りやすいと斉藤氏は話す。

 「現場の感覚を持たない人ほど、ソーシャルメディアの誤った活用方法を推進してしまう傾向がある。そればかりか、例えば公式アカウントのフォロワーのリストをプリントアウトさせて提出させるといった、無意味なリスク管理を義務化したりしてしまうことも多い。企業にとって重要なのは、このような誤った認識に基づく“炎上のためのソーシャルメディア活用”から、いかに抜け出すかということだ」(斉藤氏)

 企業のソーシャルメディア活用においては、あくまで「ソーシャルメディアが好きで、顧客の意見に耳を傾けられる担当者の“現場の感覚”が大切」と斉藤氏は話す。だが多くの企業では、立場や部署、規制などの問題により、アカウント運用担当者が十分な裁量を持ちにくいのが現状だ。こうした中、「企業が柔軟なソーシャルメディア活用体制を築くため、社員の草の根活動を通じた“無血革命”を起こしていく必要がある」と斉藤氏は指摘する。

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