スマートシティやビッグデータなどのソリューションに対し、日立は次世代ITの方向性などを示した新たな基盤技術を発表。“真”の顧客ニーズを掴みとっていく。
現在、「ビッグデータ」というキーワードを掲げて、ベンダー各社が新サービスや製品を躍起になって投入している。そうした中、日立製作所は新たなコンセプトを打ち出して顧客支援に乗り出そうとしている。
それが、このたび発表した「Field to Future Technology」である。“現場の事実から未来の業務に不可欠な情報を生成する技術”と定義される新たな基盤技術が生まれた背景について、日立 情報・通信システム社 ソフトウェア事業部 先端情報システム研究開発本部 本部長の三木良雄氏は次のように説明する。
「ビッグデータを活用して新たな価値を創造するためには、しっかりした基盤技術の活用が肝要だ。そこで日立は次世代のIT技術を結集して、Field to Future Technologyを確立した」(三木氏)
重要なのは、この基盤技術が単にビッグデータだけのソリューションではないという点である。スマートグリッド、スマートシティ、クラウドコンピューティングなどを含め、次世代のITはこうあるべきだということを示したプラットフォームに当たるものだという。「ほかのメーカーでは技術そのものをブランド化していこうと動きがある一方で、日立は今まで製品としてのブランドや企業姿勢を表すネーミングはあったものの、それらを一くくりにして共通的な技術にするような取り組みはなかった」と三木氏は説明する。
では、Field to Future Technologyはどのような技術で、それが企業のビッグデータ活用に対していかなる価値を提供するのか。Field to Future Technologyは、データを「集めて」「溜めて」「素早く」「結果を」出すという、大きく4つの要素から成り立っている。具体的には、企業に散在するデータを収集し、既存データとの連携を図り、業務とデータの関連を可視化する技術(データの可視化)、定型、非定型に限らず集められた大量データの格納場所、構造、関連性、内容などの違いをユーザーに意識させずに、統一的なデータ管理を実現する技術(データ仮想化)、データの並列分割と実行を記憶デバイスの並列性に自動的に整合し実行する技術(データ並列化)、データの全体像、相互関係、潜在構造などを分析、抽出することでデータを情報へ昇華する技術(データ抽象化)である。
「これによって、ユーザーは欲しい情報をシステムに問い掛けるだけで、即座に情報を取り出せるようになる。これがビッグデータに対する日立の課題認識と、それに対する技術的な解である」(三木氏)
また、日立は3月13日に組織改編を発表。情報・通信システム社RAIDシステム事業部、ソフトウェア事業部およびエンタープライズサーバ事業部を統合して、ITプラットフォーム事業本部となる。すなわち、ソフトウェア部門とハードウェア部門が一体となって4月1日から新たなスタートを切ることになる。そして新たな基盤技術であるField to Future Technologyを、日立のソフトウェアやミドルウェアに加え、関連するハードウェアも取り込んだ共通の枠組みで推進していくつもりだという。
「今までは組織が縦割りになっていて、ソフトウェア単体、ハードウェア単体と閉じた形でソリューションを提供してきた節がある。ビッグデータソリューションにおいては、ソフトウェアとハードウェアが一体化した体制が望ましい」(三木氏)
ところで、なぜ今、ビッグデータが脚光を浴びているのか。企業が抱えるデータの分析や、経営情報の活用に対する重要性は、BI(ビジネスインテリジェンス)やDWH(データウェアハウス)といったITソリューションが登場したころから語られていたことだ。
三木氏によると、GoogleやAmazonといったインターネットサービス事業者がビッグデータの活用によってビジネス成果を上げていることで、業種業態が異なる企業でも同様のチャンスがあるのではないかという期待が高まっているからだという。加えて、以前と異なり、ストレージ容量が増大しネットワーク回線が太くなったことで、遠隔地にあるデータをネットワーク経由で収集し、溜めるということが可能になったほか、Hadoopに代表されるような技術によって大量データの高速処理が実現できるようになったことなども大きいという。
「従来はデータを抽象化して、分析のエッセンスを得たところで終わっていた。現在では、下支えするインフラのパフォーマンスが向上し、データ分析への障壁が低くなった。何かデータを分析しようと思えば、会社や家庭の一角で簡単にできる時代になったといえよう」(三木氏)
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