HPが描くx86サーバの未来像Weekly Memo

先頃、x86サーバの新世代機を発表したHP。x86サーバ市場をリードするHP米国本社の同事業責任者に新世代機の革新性やx86サーバの未来像について聞いてみた。

» 2012年04月23日 08時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

満を持して発表したx86サーバの新世代機

 米Hewlett-Packard(HP)が先頃発表したx86サーバの新製品「HP ProLiantサーバーGeneration 8(以下、HP ProLiant Gen8)」は、x86サーバ市場をリードする同社がコストパフォーマンスや利便性を追求し、満を持して市場投入した新世代機である。日本では日本HPが3月29日に発表した。

 これを受け、本コラムでも「“自働サーバ”に込めたHPの思惑」(4月2日掲載)と題して取り上げたが、さらに先週、来日したHP米国本社のx86サーバ事業責任者に、新世代機の革新性やx86サーバの未来像について話を聞く機会を得たので、あらためて紹介したい。

 米HPインダストリースタンダードサーバ部門シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのマーク・ポッター氏 米HPインダストリースタンダードサーバ部門シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのマーク・ポッター氏

 まずはHP ProLiant Gen8の特徴を少しおさらいしておこう。最大の特徴は、テクノロジー、インフラ、サービスを融合させることで、導入・監視・運用・保守といった運用ライフサイクル全般で「自働化」を実現する新たな設計コンセプト「HP ProActive Insightアーキテクチャ」を実装したことにある。

 この新アーキテクチャを実現するコアテクノロジーとして、サーバ内蔵の管理システム最新版「HP iLOマネジメントエンジン」を標準搭載。これまでのリモート管理や電源管理・制御といった機能に加えて、導入・維持更新の作業時間を大幅に短縮できる「インテリジェント・プロビジョニング」、OSに依存しない「エージェントレス管理」、OSの動作に依存せずに自動でダイアログやログを記録する「アクティブヘルスシステム」といった機能も提供する。

 また、ハードウェア自身が障害予兆などをHPサポートセンターへ自動的に通報することにより、問題発生を事前に回避できる「自動通報」機能や、サーバの運用・保守に必要な情報をまとめて表示するクラウド型のハードウェア管理ポータルも提供するとしている。

 日本HPはこの新世代機を「自働サーバ」と銘打った。これを受けて筆者は前コラムで、「自働サーバ」はクラウド時代のサーバのあり方を示唆しているのではないかと記した。なぜならば、ユーザーにとってはサーバ運用面での一層の安心・安全を手に入れることができ、パートナーにとってはサーバ運用の手間を省くことができるのでアプリケーションサービスなどへの傾注が可能となり、サーバベンダーにとってはユーザーおよびパートナーの囲い込みを図ることができるという「三方良し」の状態が成り立つ可能性が高いからだ。こうした「自働サーバ」の登場で、これまで価格競争中心の“消耗戦”になりがちだったx86サーバ市場の流れが変わるかもしれないと記した。

キーワードは“コンバージドインフラストラクチャ”

 「HP ProLiant Gen8はこれからの時代に向けた業界標準のx86サーバのあるべき姿を示したものだと確信している」

 年間売上高130億ドルを超える事業規模のHP インダストリースタンダードサーバ部門を率いるマーク・ポッター シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーはこう言って胸を張った。その自信はどこから来るのか。ポッター氏はおもむろにこう語った。

 「ビッグデータに対応したクラウド時代が到来しつつある中で、x86サーバの需要はこれからさらに急増していくだろう。そうなってくると、サーバ自身がインテリジェント化して自己管理できるようにしていかないと運用・保守はおぼつかない。HP ProLiant Gen8はそうした時代をにらんで、10万件を超えるユーザーやパートナーの要望を反映して商品化したものだ。こうした革新への取り組みは、x86サーバ市場をリードしているHPの使命だと心得ている」

 実は、ポッター氏は20年以上前のコンパック(後にHPと合併)時代からx86サーバ事業に携わり同市場をリードしてきた“ミスターx86サーバ”ともいえる人物である。まさにx86サーバの歴史の証人でもあるだけに、その自信はこれまでの実績に裏打ちされている。

 「HP ProLiant Gen8には当面必要と思われる機能要素をすべて盛り込んだ。今後、競合他社もこれに照準を当てて対抗製品を出してくるだろうが、とりわけ今回新しく実装したアーキテクチャに関わるところなどは、そうたやすく追随できる技術ではない。しかもこの新アーキテクチャによって、これからますますエコシステムが拡充していく。HPは今後も技術やサービスを磨き続けるとともに、エコシステムを拡充し続けることで、ユーザーやパートナーにHP製品を選んでもらえるようにさらに精進していきたい」

 こう語るポッター氏に、“ミスターx86サーバ”だからこそ、最後にx86サーバの次なる革新は何か、未来像について聞いてみた。するとこんな答えが返ってきた。

 「キーワードは“コンバージドインフラストラクチャ”。例えば、サーバと運用管理に加え、ストレージ、ネットワーク、電源や冷却の仕組みなどが統合化されたインフラが求められていくだろう。今回発表したHP ProLiant Gen8もその大きな流れに沿ったものだ」

 「コンバージドインフラストラクチャ」という言葉は、実はHPのエンタープライズ向け製品の基本戦略でありビジョンを表したものである。したがって、この言葉が出てくるのは当然かもしれないが、具体的なイメージとして分かりやすかったのは、今回HP ProLiant Gen8で実装された新アーキテクチャが、今後はストレージや他のアプライアンスなどにも搭載されていくようになる、との説明だった。

 HPの「コンバージドインフラストラクチャ」という戦略も、エンタープライズ向け製品の分野ではこのところ流行の“垂直統合型”の製品やビジネスモデルを目指しているように見て取れる。これについてポッター氏は「クラウド時代を見据えると、統合の動きは必然だろう」と言いつつ、次の点を強調した。

 「コンバージドインフラストラクチャといっても、基盤となる技術はすべてオープンでなければならないというのがHPの強い信念だ」

 垂直統合型の製品は、ともすればオープン性が失われてしまうのではないかとの見方もあるが、そこは完全に担保するのがHP流のようだ。とすれば、今回HP ProLiant Gen8で実装した新アーキテクチャも業界標準を目指すのか。その動向に注目しておきたい。

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