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» 2012年05月31日 08時00分 公開

ビッグデータ活用とソフトウェア投資は売上増のカギとなるか?アナリストビュー(2/3 ページ)

[生熊清司(ITR),ITmedia]

 さらに、企業の売上高に占めるIT予算比率では、2011年度は2010年度を0.2ポイント上回る3.0%となり、5年振りの3%台となった。定常費用(運用・管理など定常的に発生する費用)を100としたときの戦略投資額(新規システム構築、大規模なリプレースなどに充てられる費用)の比率も上昇し、過去最低となった2010年度(50.1)から持ち直して62.0となった。これは、IAサーバとサーバ仮想化の導入によるハードウェアの統合が進んだことが主な理由であるとみられる。しかし、相変わらず、IT予算の戦略投資への振り分けが十分に行えていないことに変わりない(図2)。

図2 IT予算比率(対売上高)と戦略投資比率の経年変化(2001〜2011年度) 出典:「IT投資動向調査2012」ITR

グローバルに対応したIT活用

 これを見ると3年後には6割から7割の企業が実施することを予定しているが、2005年度から2011年度の7年間で実際に実施した企業は2割程度であり、進展が見られない。

 わが国は今後、少子化と高齢化が急速に進む。厚生労働省が今年1月に発表した将来人口推計によれば、50年後の2060年に8674万人まで人口が減少し、総人口に占める65歳以上の割合は39.9%に膨らみ、深刻な高齢化と人口減少が到来する。このことは、内需の減少をまねき、企業は今以上に海外市場でのビジネス展開をしなければならないことを意味している。

 従来の日本企業の海外進出と言えば、安価な労働力を得るための生産拠点の海外移設が中心であり、ITに関しても基本的には国内システムをそのまま海外で利用することが多かったが、今後は海外ビジネスによる売上比率が国内ビジネスを上回ることで、グローバルで通用するITシステムの構築が必要となると考えられる。

 では、これまでの日本のIT活用はグローバルで通用するのであろうか。ここでは、米国と比較することで、ITによる生産性の寄与について見てみる。

 総務省が発行している平成23年度版のICTの経済分析に関する調査によれば、日本と米国の2009年の実質情報化投資は、18.9兆円で民間企業整備投資に占める情報化投資の比率は26.4%であったが、米国の実質情報化投資は5585 億ドル(約44.7兆円、1ドル=80円)で、民間企業設備投資に占める情報化投資の比率は44.5%であった。GDPの規模や産業構造が違うので、この結果をそのまま比較することはできないが、米国は日本に比べて設備投資に占める情報化投資の割合が大きいことが分かる(図3)。

図3 日米の情報化投資 出典:総務省、平成23年度版のICTの経済分析に関する調査

 さらに、2009年の情報化設備投資の内訳を見てみると、日本ではソフトウェアに占める割合が47.9%と最も高く、電子計算機本体・同付属設備が41.9%、電気通信機器が10.3%であるのに対し、米国では、電子計算機本体・同付属設備が42.5%と最も高く、ソフトウェアが32.5%、電気通信設備が25.0%となっており、日本の方がソフトウェアに投資している(図4)。しかし、一般的には、日本はハードウェアへの投資が多く、米国ではソフトウェアへの投資が多いという感覚があり、事例や製品を見る限りでは、ソフトウェアの新たな利用形態や新機能の利用の多くは、米国の方が先で、日本が後追いをするケースが見受けられる。このことから、日米のIT投資には、ソフトウェアに対する投資の仕方が異なるのではないかと考えられる。

図4 日米の情報化投資の内訳 出典:総務省、平成23年度版のICTの経済分析に関する調査

 では、日米のソフトウェアの投資にはどのような差があるのであろうか。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学教授でRIETI(独立行政法人経済産業研究所)のファカルティフェローである元橋一之氏は、2010年11月のRIETIポリシーディスカッション・ペーパーにて「ITの生産性に対する影響を日米で比較した場合、米国企業は日本企業の2倍の効果が観察されている。日本企業は米国企業に比べてITと経営の融合度が低く、専任のCIOを置いている企業の割合が小さく、また、情報系システムに対する投資が遅れていることが原因となっている」と指摘している(出典:「ITと生産性に関する実証分析:マクロ・ミクロ両面からの日米比較」、RIETI Policy Discussion Paper Series 10-P-008)。

 ITRの調査でも「情報系」に対して重要とは考えているが、実際の導入は進んでいないという結果が出ている。図5は「国内IT投資調査報告書」で取り上げている主要なIT動向に対する実施率の変化から「情報系」の1つである「情報/ナレッジの共有/再利用環境の整備」の実施率の 経年変化を表したものである。

 これを見ると3年後には6割から7割の企業が実施することを予定しているが、2005年度から2011年度の7年間で実際に実施した企業は2割程度であり、進展が見られない。

図5 「情報・ナレッジの共有/再利用環境の整備」実施率推移 出典:ITR 「IT投資動向調査」2006〜2012

 また、ITRでは企業におけるCIOの選任状況に関しても10年間にわたって継続的な調査を行っている。しかし、CIOがいない企業の割合は、依然として過半数を占め、専任のCIOを置いている割合は10%台の前半から脱していない状況が続いている(図6)。

図6 企業におけるCIOの選任状況(2002〜2011年度) 出典:ITR 「IT投資動向調査」2006〜2012

 ITのグローバル対応と言うと一般的には、アーキテクチャの標準化、プロセスの標準化、ハードウェアやソフトウェアの標準化、マスタデータの統合といったことを想起する。もちろん、このような事項は企業ITの領域で、アプリケーションやITインフラの企画・開発・運用を確実に遂行するというIT部門の基本的なミッションであり、ITをグローバルで利用する際にも重要な事項であるが、ITと経営の融合度の高い欧米ではCIOは正に経営層のメンバーの一員であり、経営戦略の立案や新規ビジネスの立ち上げに深く関与しており、ITに対するミッションはITを活用することによる事業コストの削減だけでなく、売上拡大への直接的な貢献が含まれている。

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