IaaS参入でクラウド戦略のピースを埋める エリソンCEOOracle OpenWorld San Francisco 2012 Report

今年もサンフランシスコで「Oracle OpenWorld」が開幕。初日の基調講演に登壇したラリー・エリソンCEOは、クラウドサービスのさらなる拡充を宣言した。

» 2012年10月01日 16時08分 公開
[伏見学,ITmedia]

 米Oracleは9月30日(現地時間)の夕刻、カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターで「Oracle OpenWorld San Francisco 2012」を開幕した。富士通 豊木則行執行役員常務のオープニングキーノートに続き、聴衆の大歓声に迎えられて登場したのは、Oracleのラリー・エリソンCEOだ。

 満を持して世に送り出す新たなクラウドサービスについて、エリソン氏は「ハードウェアやソフトウェアなどのシステム基盤は我々が提供する。メンテナンスも我々が担う。ユーザーは設備投資が不要で、必要に応じてキャパシティだけを月極めで買えばいい。プライベートクラウドにおいてもだ」と力を込めた。

クラウドと電気は似ている

Oracleのラリー・エリソンCEO Oracleのラリー・エリソンCEO

 昨年、この場でクラウド事業に乗り出すことを自らの口から明らかにしたエリソン氏は、先日行われた四半期決算会見で、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)に加えて、IaaS(Infrastructure as a Service)の形態についても、同社の包括的なクラウドサービス「Oracle Cloud」において提供することを発表した。IaaSの特徴についてエリソン氏は、「従来のコモディティ化したインフラサービスではなく、仮想管理、OS、ミドルウェア、ストレージなどを取り込み、アプリケーションサーバ専用機『Exalogic』やデータベース専用マシン『Exadata』、統合システム『SPARC SuperCluster T4-4』などの高速かつセキュアなエンジニアド・システムで提供することだ」と強調した。

 Oracleがクラウドサービスに参入した経緯について、エリソン氏はクラウドの歴史を振り返りながら説明する。1990年代後半、米NetSuiteや米salesforce.comといった企業がSaaS事業を開始し、2006年には米AmazonがIaaSの「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」を提供することとなった。Amazonによってクラウドがポピュラーとなり、ユーザーはストレージやサーバ、ミドルウェアなどの製品をオンプレミス型ではなくサービスとして導入するようになった。

「クラウドの構造は電気と同じ。電力会社(サービスプロバイダー)が風力や原子力などによって電気を生成、管理して提供し、消費者はただ電源につなげばいいというシンプルなモデルだ」(エリソン氏)

 上述したように、Oracleは昨年にクラウドサービスの提供を発表したが、実は2004年から業務アプリケーション製品群「Oracle Fusion Applications」のプロジェクトで取り組んでいる。ただし、クラウドサービスを提供する上で、セキュリティやパフォーマンスなどの面で強固なプラットフォームに必要性を感じたため、完全なスイート製品をリリースするには時間がかかったという。

 その後、2011年にようやく発表できる段階になったが、それで完成ではなかった。エリソン氏は「単にアプリケーションプロバイダーでは駄目で、顧客が望むのはオンプレミスの代替である。従って、SaaS、PaaS、IaaSのコンビネーションが不可欠だった」と話す。そこで、既存アプリケーションをクラウドに移すためにIaaSをポートフォリオに追加したのである。

共通基盤でどのクラウドレイヤーとも連携

 これにより、プライベートクラウド環境とOracle Cloudとのシームレスな連携が可能となった。例えば、すべてのアプリケーション開発をOracle Cloudで行い、プライベートクラウドにデータ移行したり、本番環境のアプリケーションはプライベートクラウドに置き、災害対策(DR)サイトとしてOracle Cloudを利用したりできる。

 クラウドを導入したいという企業は多いものの、セキュリティ規制が厳しく、サーバをファイアウォールの中に設置しなければならないような企業もある。Oracleのクラウドサービスはすべて同じインフラを持つとともに、ファイアウォールの内側にクラウドを構築できる「Oracle Private Cloud」がこのたび発表されたため、顧客はOracleのデータセンター、あるいは自社のデータセンターのどちらにサーバを設置するか決めるだけで、同等のクラウド環境を利用できるのだという。

「インフラ、OS、仮想化、プラットフォームなどは共通で、業界標準の言語を活用しているからこそ、すべてのクラウドレイヤーで実現できる。これまでのOracleの経験を生かし、信頼性や拡張性の高い、セキュアなサービスをオンプレミス型と同様に提供していきたい」(エリソン氏)

基調講演会場には数千人が詰めかけた 基調講演会場には数千人が詰めかけた

 そのほか、エリソン氏の基調講演では、約5年ぶりのメジャーリリースで、初のマルチテナントデータベース製品「Oracle Database 12c」や、新たなフラッシュキャッシュソフトウェアを搭載するなどし、従来と比べてデータ処理の高速化や消費電力の低減を実現した最新バージョン「Exadata X3」がアナウンスされた。これらについては、カンファレンス2日目以降のゼネラルセッションなどで詳細が紹介される予定だ。

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