機能説明はダメ、ユーザーの立場になって対話する 帝人・加賀さん情シスの横顔

新連載「情シスの横顔」は、主にユーザー企業のIT部門に所属する若手社員にスポットライトを当て、現場での彼らの奮闘をお伝えする。

» 2013年04月01日 08時30分 公開
[伏見学,ITmedia]

 経営革新の陰にITあり――。昨今、イノベーティブな取り組みで注目を集めている企業を見ると、その多くはITを効果的に活用したり、ビジネスを支える重要な基盤としてシステム投資を積極的に行ったりしている。

 こうした背景には、経営トップがITの価値を十分に理解し、事業成功に結び付けるためにリーダーシップを取っていることが大きい。一方で、その企業ITを推進する情報システム部門の現場スタッフの活躍も見逃すことはできないだろう。

 新連載「情シスの横顔」では、まさに情報システム部門の実現場において日々奮闘する若手スタッフに焦点を当て、彼らの取り組みや仕事に対する情熱などをお伝えしていく。第1回は、大手化学繊維メーカーである帝人を訪れた。

ゴールの違い

 現在、帝人の情報システム部において、主にネットワークをはじめとするインフラストラクチャ領域を担当しているのが、加賀亨さんだ。

帝人 情報システム部の加賀亨さん。2000年にインフォコム入社。大阪府出身 帝人 情報システム部の加賀亨さん。2000年にインフォコム入社。大阪府出身

 加賀さんは2000年に、帝人グループの情報システム関連子会社であるインフォコムに入社。インフォコムは、インフラの開発、運用を担うTGサポート部と、アプリケーションの開発、運用を行うTGシステム部に分かれており、加賀さんは前者に配属となった。入社してからの11年間、主にネットワークやセキュリティ基盤の構築、運用を担当し、帝人グループ社屋のLANやWANなどを整備してきた。

 また、入社早々の2002年には、帝人グループのデータセンター移転プロジェクトにかかわり、ネットワークの移行計画、設計、構築に携わった。

 そうした経験を基に、2011年4月に現職である帝人の情報システム部に異動した。同部門は約10人の体制で、帝人グループの情報システムにかかわる企画が大きなミッションとなっている。異動によって当然役割が変わったわけだが、特に大きな仕事上の変化は何だったのか。加賀さんは「プロジェクトにおけるゴールの違い」を挙げる。

 「インフォコムにいるときは、帝人から案件を受託して、基本的にシステムを作り上げることがゴールでした。しかし、IT企画室は発注側の立場なので、システムが完成したら終わりではなく、導入した後に具体的な効果を出していかなければなりません」(加賀さん)

 従って、プロジェクトマネジメントにおいても、より全体を俯瞰した視点が求められるようになったのだという。

要件定義をしっかりと

 では、加賀さんが異動後にかかわった主なプロジェクトとは何か。まずは、2011年5月にスタートしたOS移行プロジェクトである。社員のPCをWindows XPからWindows 7へとアップグレードした。次に携わったのが、プライベートクラウド基盤の構築だ。2011年上期に実施したこのプロジェクトでは、発注者としてプロジェクト全体のマネジメントを経験した。さらに現在は、メールシステムの更新プロジェクトを目下進めているという。

 プロジェクトマネジャーとして特に気を付けているのは、コストおよびスケジュールの管理である。決められた予算の中で、納期をしっかりと守る。こうした当たり前のことを当たり前に遂行できることこそが、プロジェクトマネジャーにとってなくてはならないスキルなのだ。そのためには、「何よりも要件定義をきっちりとやることが重要なのです」と加賀さんは話す。

 加えて、上述したように、プロジェクトによる成果を示すこともプロジェクトマネジャーの責務である。この点について、加賀さんは経営層に対するプロジェクトの進ちょく報告ならびに成果報告を定期的に行うように努めているという。

エンドユーザーとのコミュニケーションは?

 新たなITシステムを導入したり、ITプロジェクトを進めたりする際に、よく情報システム部門の課題として挙がるのが、ほかの事業部門とのコミュニケーションエラーである。ご多分に漏れず帝人も「業務部門のエンドユーザーに対して説明、交渉する機会が多々あり」(加賀さん)、さまざまな苦労があるのだという。

 例えば、業務部門にもIT、特にクラウドサービスに精通する社員がいて、社内で構築しようとしているシステムと他社のサービスとを比較されることがあるのだという。彼らに対しては、なぜこのシステムを導入することが良いのかというメリットを、具体的な効果を示して説明するようにしている。その際に心掛けているのは、「できるだけ専門用語を使わずに言葉をそろえるとともに、単なるシステムの機能説明ではなく、ユーザーの立場になって利活用がスムーズにいくための説明をするようにしています」と加賀さんは力を込める。

 エンドユーザーの実業務に対する知識不足については、幸いなことに、同社の情報システム部に業務部門出身者が集まっているため、部署全体でフォローしたり、事あるごとに業務現場と意見交換したりすることでカバーしているそうだ。

ITはなくてはならない存在に

 一方で、加賀さん個人としての現在の課題は何か。

 「どのようなプロジェクトであっても、もはやITはなくてはならない存在になっています。今、当社の情報システム部ではスタッフがそれぞれ別のプロジェクトを進める体制になっていますが、今後は、あらゆるプロジェクトのIT全体を俯瞰するようなスキルが必要だと感じています」(加賀さん)

 実際に、情報システム部でも3〜5年後に帝人のITはどうあるべきかという議論が日々なされているのだという。そうした中で、関心の高いものの1つにクラウドサービスを挙げる。今後の目標として、「クラウドサービスをいかに帝人のニーズにフィットさせていくか。そのためのニーズの掘り起こしを進めていきます」と加賀さんは意気込んだ。

「ITは企業の戦略において不可欠なものになりつつあります。ITが会社を引っ張っているのだという気概を持って頑張りたい」 「ITは企業の戦略において不可欠なものになりつつあります。ITが会社を引っ張っているのだという気概を持って頑張りたい」

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