アダルトサイトのリスク、注意事項総まとめ萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(1/2 ページ)

これまで企業向けの話題を中心に取り上げてきたが、最近は「個人をターゲットにした相談も含ませて欲しい」という希望をいただく。そこで今回は、個人向けを含めて相談の多い「アダルトサイト」の注意事項をまとめてみたい。

» 2014年02月21日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

 情報セキュリティの仕事をもう30年近くしていると、様々な方から相談をいただく。その中で圧倒的に多いのが「アダルト」に関する相談であった。さすがに、最近ではその手の情報が充実し、自己完結できる方は多いものの、それでも悩みを抱える人は少なくない。

 ITmediaの大部分の読者にとっては、本稿は「知識の整理」程度になるかもしれないが、一部のネット初心者(特にネットを始めて日が浅い若い世代)にとってはまだまだ安心、安全なインターネットサーフィンを楽しむための知識が十分ではないだろう。

トラブルに巻き込まれないためには?

 まず非常に多い相談が、「安い(月1000円以下とか、9ドル99セント以下など)と思って有料サイトに加入したものの、画像や映像がほとんど更新されず、解約したいが、該当ページが見つからない」というものだ。

 加入する際に、必ずそのWebサイトの評判を確認したり、サイト内に解約フォームがきちんと整備されたりしているかを確認することが必須だ。解約フォームがない業者に限って、連絡先のアドレスへ解約の申し入れをしてみても、ほとんど返答はない。

 つまり、加入前なら慎重に「安心できるか?」「解約フォームはあるか?」などを必ず確認する。加入後なら、公的な相談窓口で依頼すると代行業者の紹介をしてくれるところもある。「アダルトサイト解約」といったキーワードで検索すれば、多数の業者が表示される。安い場合なら3000円程度から、高くても1万円程度までと様々だ。個人営業から専門会社、行政書士事務所、弁護士事務所まで多数が代行しているので、個人で行うには自信がないというなら、代行業者を活用するのも手である。

 直接的な解約以外での注意事項は次の点だろう。まず、ある意味で仕方のないことかもしれないが、会員制のアダルトサイトに登録すると、まず間違いなくアダルト系の勧誘メールが急増する。筆者が対応したある中小企業の役員は、登録前に比べて20倍以上も勧誘メールが届くようになり、「困惑した」と嘆いていた。

 業者から見れば、アダルトサイトに加入した人物は、他のWebサイトにも加入してくれる「お客様」になる可能性が高いということだ。サイト業者間で名簿が売買されていたり、従業員が小遣い稼ぎで他の業者に持ち込んだり、1つの業者が何十ものWebサイトを運営しており、その別サイトの名前で勧誘したりといった様々なケースが考えられる。

 そして勧誘メールの一部には、マルウェアを混入するような凶悪なものあるので、感染しないように注意しなければいけない。最も好ましい対策は、そもそもそういったWebサイトに加入しないことだが、今のネットを分析する限り、アダルトサイトが滅亡することはまず有り得ないだろう。もし、どうしても利用したいなら、くれぐれも法律に則り、自制心を持って利用すべきである。

身に覚えのない請求には?

不正請求の一例(IPAより)

 上述の場合は、ユーザーが自ら加入していた場合となるが、ここでは全く加入した覚えがないか、もしくはアダルトサイトのトップ画面までは行ったが加入していないという場合だ。

 これらについては、「無視」が最善だ。ただし、PCの設定が勝手に変更され、請求画面などが頻繁に表示されたり、Webブラウザ起動時の初期画面がアダルトサイトに変更されたりすることがある。その場合は、設定を元に戻さないといけない。方法はその状況で異なるが、ネットで検索すると、すぐに分かるだろう。

 なお、勝手に設定を変更されて請求画面が表示し続けるような被害が騒がれたのは、昔のことだ。現在は、Windows 7や8などセキュリティが強化されたOSの利用が進み、こういう被害は減少している。ただ、ユーザーがうっかり「ボット」に感染した場合は、その限りではない。また強制的に高額のダイヤルアップ接続(多い例はモルジブの電話番号に変更されてしまう)させられるケースも無くなりつつあるが、まだ少なからずあり、初心者は注意すべきである。

 最悪に近い対応は、うっかりして業者の指定先に連絡してしまうことだ。まさしく彼らの思うつぼである。業者は連絡先を通知させようと、こちらの存在も、氏名も、住所も、電話番号も知っているかのようにふるまうが、実際には知らない。だから、連絡さえしなければ問題が大きくなることはない。もし、してしまったのなら、前述した対応をとることになる。

 万一連絡先を業者に知らせてしまうと、例えば自宅に不当な「督促状」郵便が届く可能性がある。これも原則として放置しておけばいいが、最近怖いのは「無視」すればいいと思い込んだ、内容確認をしない「情弱者」を狙うものだ。時には裁判所から出頭通知が送られてくる。これも無視してしまうと、極めてまずい結果になる。業者は、わざと「無視」をする人物を狙い、少額請求訴訟を起こし金銭を搾取しようとしているからだ。その場合は、きちんと対応するしかない。きちんと対応さえすれば、実際にはWebサイトを使っていないので、訴訟に勝てるだろう。

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