新時代のデータ転送基盤でビジネスの現場の情報活用を支援せよ!

企業活動のグローバル化が進む中、データの「流れ」が大きく変わりつつある。かつてデータの送受信はシステム間連携によるものが大半を占めたものの、今では業務情報のデジタル化が進み、情報活用の機運も高まる中で現場レベルでの情報のやりとりが急速に拡大している。しかし、既存の企業システムはこうした事態を想定していない場合も多く、そのことに起因する課題も顕在化しつつある。IT部門はどう対応していくべきか。ITR リサーチ統括ディレクター/シニア・アナリストを務める生熊清司氏の話からその道筋を探ってみたい。

» 2014年02月24日 10時00分 公開
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「データの流れ」の変化が新たな課題に

 アベノミクス効果で日本経済はいよいよ底を脱しつつあるとされるが、ここに至るまでの「失われた20年」の間に、日本企業は生き残りを賭けてさまざまな改革を推し進めてきた。企業活動のグローバル化もその1つだ。その結果、企業システムの姿も大きく変貌を遂げた――こう指摘するのはアイ・ティ・アール(ITR)リサーチ統括ディレクター/シニア・アナリストの生熊清司氏である。

生熊氏 ITRリサーチ統括ディレクター/シニア・アナリスト 生熊清司氏

 「海外の売上比率が年々高まる中、企業では設計や製造、営業といった一連の業務やシステムの海外移転が進んでいる。グローバルで情報を共有すべく社内情報の電子化にも取り組み、今では各国で管理される情報を一元的に把握できるようにするなど、あらゆる経営リソースを『見える化』する数多くの仕組みが整備されるようになった」(生熊氏)

 このことは企業システムにおける「データの流れ」を大きく変える要因となっている。従来、企業内におけるデータのやりとりは、会計と人事、あるいは会計と購買というようにシステムが主役であり、システム間におけるファイル転送が多くを占めた。今では情報の電子化が進み、その主体が「人」に移りつつある。例えば、顧客の求めに応じて営業部門が海外の設計部門から製品データを取り寄せるというように、データの流れにおける変化が業務部門を中心として急速に広がっている。

 また、データ自体の大容量化も進んでいる。Webサイトでの映像データの利用はもはや当たり前となり、設計工程で大容量のCADデータを利用することも一般的になった。ある外資系自動車メーカーは、生産ラインの品質管理を目的として、グローバル展開している各工場の全工程をリアルタイムに撮影/記録している。データを活用する裾野は着実に広がっているわけだ。

 こうしたデータの流れの変化を受けて生熊氏は、IT部門が新たなシステムの課題に直面していると指摘する。

 「業務の現場部門は、必要な時に必要なデータを簡単で迅速に入手できる環境を当たり前のものと捉えている。しかし、電子メールのような企業ITにおける各種のツールは使い勝手が低いため、現場の要望に応えられず、そのことが生産性や業務スピードなどの向上を阻む足かせにもなっている」(生熊氏)

業務部門の視点に立った情報連携の仕組み

 経営におけるセキュリティ対策や災害対策などの重要性を考慮すれば、従来型のデータの流れに合わせて構築されているデータ管理の仕組みを維持しなければならない。その点を踏まえて新たなデータの流れに対応していくには、既存のファイル転送とは一線を画す、柔軟性に富んだ高度なデータ転送のため仕組みである。

 これまで多くの企業が専用線などの「閉じたネットワーク」で国内外の拠点を結び、データをやりとりしてきた。その理由はコンプライアンスなど各種ポリシーを全社規模で順守するためだ。今ではあらゆる業種でグローバルな企業間連携が進んでいる。日本と現地企業との間で頻繁にデータをやりとりするようになり、データの容量も増している。従来型のファイル転送の仕組みではスピードや使い勝手を重視する現場の声に応えられなくなってきた。

 こうした現状を踏まえ、生熊氏は理想とされる情報連携基盤の要件として、将来のデータの大容量化に対応できるWANやインターネットでの通信速度の速さを挙げる。「業務効率の面からも連携先を含めた仕組み全体のスループットに注意しなければならない」(生熊氏)

 また、データのやりとりは「人」が主体になるので、データを簡単に扱えるインタフェースも不可欠である。さらに、コンプライアンスや法規制などを順守しつつ、現場に負担をかけることなく通信を適切に管理していけることも必要だ。

 「IT部門は、これからのデータの流れにおいて業務の現場部門が主役になることを理解しなければならない。つまり、これからの情報基盤には大容量のデータを安全かつ簡単に送受信できるという、極めてシビアな要件が突きつけられている」(生熊氏)

新たな情報基盤に求められる意識改革

 データの送受信においてITベンダーは、これまでもWAN高速化や企業間連携用のミドルウェア、各種のコミュニケーションツール/サービスといった製品をさまざまな角度から提供してきた。しかし生熊氏は、「企業の抱える複雑な問題にワンストップで対応できるソリューションがまだ無い」と指摘している。

 「ユーザー企業から『言葉も制度も異なる相手を含めて、社内と同じように大容量のデータを安全かつストレスなくやりとりできるソリューションはないだろうか』と相談を受ける機会が急増している。企業のニーズがあまりに広く、単一のソリューションではカバーできなくなっている」(生熊氏)

 企業の求める情報基盤を実現するために、生熊氏はまず既存の情報の扱い方を見直すべきだとアドバイスしている。例えば、情報を共有するためだけに関係者全員にメールの一斉送信することが日常的に行われている。しかし、このような使い方はネットワーク帯域を消費するだけでなく、情報を伝えるべき相手とはあまり関係のない人にまで情報を送り付けるという問題がある。

 「クラウドなどを利用すれば、必要な時に必要な相手と情報をやりとりする環境を少ないコストで実現できる。データの流れの変化に対応して新たな情報基盤を実現していくには、現場部門の意識変革が欠かせない」(生熊氏)

 この点ではIT部門にも意識改革が求められるだろう。というのも、情報を厳重に管理する必要性から、これまではモバイルのような新しい使い方にも “禁止”を前提とする対応が取られてきた。IT部門のミッションを考慮すれば仕方のない面かもしれない。だが、必要以上にセキュリティレベルを高く設定している可能性も否めない。生熊氏も「現場とIT部門の衝突を招き、最悪の場合は社内におけるIT部門の地位の低下を招きかねない」と警鐘を鳴らす。

 IT部門が現場部門の視点で情報基盤を整備するとなれば、例えばUSBメモリを禁止する代わりに社員ごとに安全で自由にアクセスできるデータ保存領域を提供するなど、利用を制限するばかりではなく、その代替手段を提供して現場部門での利便性の低下を回避することになる。

 新たな情報基盤で必要とされる機能は、企業ごとに異なり一様ではない。それなら、まず自社におけるデータの重要性と機能の実装コストを突き合わせて機能の優先付を行う。それに従って一歩ずつ前進していくのが現実的な道筋だ。

 生熊氏によると、国内のあるメーカーではメールを起点としてシステムを独自開発し、継続的に機能を強化していった。その結果、今では社内における情報の流れを可視化できるようになったという。「企業の組織構造と情報の流れの関係性に着目すると、本来はあり得ない情報の流れを見つけられる。つまり、組織がビジネスの現状に合致していないが分かるようになる。企業にとって情報は不可欠であり、活用次第では予想を超える成果にもつなげていける」(生熊氏)

 新たな情報基盤に対する企業の取り組みは。冒頭で述べたようにグローバル展開するメーカーが先導している。設計や製造、サプライチェーン、営業などのあらゆる部門が顧客や現地メーカーなどとの情報共有へ積極的に挑戦し、システム面でも機密性の高い情報はオンプレミスでやりとりし、機密性の低い情報はクラウドを利用するといった具合に試行錯誤が精力的に行われている。

 グローバルで情報をやりとりするには、セキュリティ対策はもちろん、国ごとに異なる法制面への対応も必須だ。「一方ではデータをやりとりできるが、もう一方ではできないという言い訳はビジネスシーンでは通用しない。しかし、コンプライアンスの意識の高まり、この相反する状況を一気にクリアすることは困難を極める」(生熊氏)。

ITR調査 企業におけるデジタル・コンテンツに関する現状 出典:ITR・アンケート調査結果(2013年6月実施)

マーケティングを軸に情報を活用する

 近い将来に、企業の情報基盤はどのような進化を遂げるのだろうか。企業内の情報に目を向けると、例えばメーカーでは既にCADでの開発が当たり前となった設計や製造部門のみならず、あらゆる業務で情報がデジタル化され、その量が急増するのは確実だろう。そこで、「宣伝活動を高度化すべく、マーケティング部門がプロモーションのために設計/製造データを利用することも当然のようになっていく」(生熊氏)という。

 情報のデジタル化は産業構造にも大きな変革をもたらした。ECサイトの登場で新たなモノの流れが生み出されたように、メーカー自身がECサイトを運営するという動きも顕在化している。メーカーにとってはECサイトを通じた直接販売によって価格決定権を得ることができ、そこでの売上あるいは顧客の消費行動を直に把握できるなどメリットが大きい。このような変化から生熊氏は、デジタルマーケティングの隆盛を予想する。

 「デジタル化は産業構造や消費構造の一大変革をもたらす。企業はこの変化を商機としてとらえていくために、これまでIT活用が遅れていたマーケティング領域をきっかけとして、ビジネスの改革を進めていくだろう」(生熊氏)

 オムニチャネルなど実店舗も含めたマーケティング施策が展開される中で、今後は既存の業務システムとマーケティング用システムとの連携が不可欠になってくる。既に米国では8割のECサイトの顧客データを所有し、販売する事業者が出現した。データをマーケティングで活用するには、IT側の強化も必須だ。もはや待ったなしの状況である。

 「企業ではデータの周辺を管理する仕組みは存在していたが、データそのものを管理する仕組みは無かったといえる。誰がどんなデータを作成し、どこで管理しているのかを把握できていない企業は多い。今後の情報活用のためには、データそのものに着目したアプローチが必要だ」と生熊氏。データ活用に向けた企業の挑戦は、これからが本番だ。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2014年3月23日

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