2日目のSAPPHIREでは、共同創設者のハッソ会長が登場、カンファレンスはハイライトを迎えた。今回は「イノベーションのジレンマ」で知られるハーバード大のクリステンセン教授をゲストに迎え、その熱弁にさらに拍車が掛かった。
米国時間の6月4日、フロリダ州オーランドで開催中の「SAPPHIRE NOW 2014 Orlando」は2日目を迎え、午前の基調講演にSAPの共同創設者であり、今も監査役会の会長を務めるハッソ・プラットナー氏が登場し、エンタープライズアプリケーションの将来について熱弁を振るった。
自ら設立したハッソ・プラットナー・インスティテュートで教鞭を執る彼の講演は、間違いなくSAPPHIREカンファレンスのハイライトだが、力が入る余り、大幅に時間を超過するのが玉にキズだ。この日は、「イノベーションのジレンマ」(原題はイノベーターのジレンマ)で知られるハーバード大学ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授をゲストに迎え、その熱弁にさらに拍車が掛かった。
顧客の声によく耳を傾け、絶えず改良を怠らない優良企業がしばしば新興企業の前に競争力を失ってしまう。そうした大企業の宿命を解き明かした「イノベーションのジレンマ」はよくご存じだろう。
「ハイブリッド車が売れても、既存のクルマは売れなくなる。そうした持続的なイノベーションでは、置き換えは進みこそすれ、残念ながら成長を促すには至らない」とクリステンセン氏は持論を展開。プラットナー氏は、「SAPこそイノベーターのジレンマの良い事例だ」と応える。
同社は2006年にSAP ERP 6.0をリリースして以降、中断のない、つまり破壊的ではない拡張によって機能の追加・改良を継続してきており、現在のSAP Business Suiteのコードは4億行にも達している。
「われわれは破壊的なイノベーションへの転換を見極めなければならないところにきていた。シンプル化は、マーケティング上のスローガンなどではない。R/3から数えて20年以上、極めて複雑になったものをシンプルにするときがきた」(プラットナー氏)
もちろんテクノロジーの後押しも大きい。R/3のリリース当時と比較して、メモリ容量が6000倍、プロセッサのコア数×クロック数は1万8000倍に達し、近い将来さらに数倍に進化するとみられている。20年前のものは再設計が必要なのだ。
「だれも信じなかったが、2007年の段階で、わたしはデータベースの応答時間がほぼゼロになるという破壊的なイノベーションを予測し、HANAの開発を強く進言した」とプラットナー氏は振り返る。
2007年といえば、ちょうど同社がイン・メモリ・データベース技術を活用した「BI Accelerator」を発表したころだ。ハードウェアアクセラレーターをデータウェアハウスであるBWに横付けするだけで、分析のパフォーマンスを20倍から200倍も引き上げることに成功していたが、ITランドスケープの複雑さを解消するものではなかった。
プラットナー氏は、データベースそのものをイン・メモリ・データベースで置き換えられると考え、その概念をプロトタイプで実証しながらSAPの経営陣や開発陣を説得していく。
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