まだまだ続くヤジ・暴言問題 「昔は良かった」の思考にしがみつくな萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(1/2 ページ)

都議会でのセクハラ発言事件で対策が進むと思いきや、今度は「男女共同参画社会推進議員連盟」の会長がトンデモ発言をした。日本のおじさんたちはなんでこうしたヤジや暴言を繰り返してしまうのか。

» 2014年09月19日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

 多くの読者がもうご存じだと思うが、9月16日に「男女共同参画社会推進議員連盟」の総会が東京都議会の議員内にて設立、開催された。先日の女性蔑視のヤジ発言を受けての対応である。ところが、その会議終了直後に会長の野島善司都議が「結婚したらどうだ、というのは僕だって言う。平場では」と報道陣に述べた。「平場」の意味を本人は「全くのプライベートということ」と説明しているが、辞書には見当たらない。

 さらに野島都議は、発言の中で「女性と何人かで話をして、『まだ結婚しないの』と言いますよ。平場で」と述べている。この内容をテレビやネットで見て筆者は、本質が分からない、単なる無知なおやじだという感想を持った。この問題は、その無知な都議が渦中の「男女共同参画社会推進議員連盟」の会長という立場にあることが重要な観点である。情報セキュリティ教育やコンプライアンスの啓蒙教育、実際の事件現場にも遭遇している筆者としては、この問題を取り上げない訳にはいかない。

セクハラとは?

 そもそもセクハラとは、「性的嫌がらせ。または相手の望まない性的言動すべて」(セクハラ110番から抜粋)を指す。通常の犯罪と全く異なる点は、被害者がそう感じれば、セクハラだと認定される点だ。たとえ発言者が、「そのつもりはない、親しみを込めただけ」としても、裁判では全く通用しない。その発言の証拠さえあれば、ほぼセクハラと認定されてしまう。よって、都議の言う「平場だから」ということは全く通用しない。

 長年のコンプライアンス教育を通じて感じるのは、部長や役員、社長など「地位の高いおじさん」ほど勘違いをしているケースが多いということだ。その思考を変えるのはとても難しい。何度指摘しても、「知っている」「分かっている」と答えるが、全く理解しようともしない方が多いのが実情である。

 大学の構内でも同じであり、ここではいわゆる「アカハラ(アカデミックハラスメント)」として分類される。今年も幾つか情報を聞いており、9月には中央大学の教授が女子学生に性的嫌がらせをしたとして懲戒解雇になった。

 以前から筆者は、欧米の大学における対策を真似て、教授の部屋には生徒を1人にさせないこと、異性の場合はドアを開いておき、身の潔白を証明できるようにしておくべきだとアドバイスしている。実際にこうした手段をとっている友人が多い。

 今の若者からすると、ヤジや暴言をする人間が培ってきた昔の感覚は「別世界」に違いない。

 筆者は多数の職場を経験しているが。ある会社では部の飲み会の場で、顔を真っ赤にした係長が新人女性のお尻に触れたり、胸を触ったりしている情景が当たり前だった。別の職場では社長からマンションを購入してもらったと喜ぶ女性社員もいた。コスプレ好きの課長が新人女性に「服代くらい出すから、ちょっと着てみて」としつこく迫るシーンも見た。ハラスメントを受けた女性の中には数カ月後には退職する人もいた。そのことを上司に話しても、「まあ、そういう人はいずれ辞めるから」と問題にされなかった時代もあった。

 だが、いまや時代は大きく変わった。この日本の慣習を外国に持ち出した“おじさん”たちには、とても大きなしっぺ返しが待っていた。

 1996年、米国三菱自動車でのセクハラ損害賠償請求は、当時の日本円にして約220億円にもなった。その後、34億円で和解が成立している。「セクハラで34億円も払う? 冗談じゃない! どうしたら請求額が220億円にもなるんだ」と思う人は、米国のセクハラにおける損害賠償基準を勉強するといい。考え方の違いだが、これは事実だ。

 2006年には、北米トヨタ自動車の元社長秘書(日本人女性)が、同社社長(日本人男性)によるセクハラと同社の対応の不備について、両者らに当時の日本円で約214億円の損害賠償を請求した。日本人同士の問題だが、米国での訴訟になった。これも和解が成立しているが、双方ともに和解額を公開していない。正確には分からないが、ある弁護士は私見ながら上述のケースよりも多くの高額な和解金が支払われたのだろうと話していた。

 しかし、日本での訴訟なら和解額はせいぜい1000万円程度が上限である。故人を悪く言うつもりはないが、日本では芸能人としても有名だった某氏が大阪府知事時代に有罪となり、民事で1100万円を女子学生に支払っている。

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