2020年、公衆無線LAN普及で知っておくべきこと半径300メートルのIT

観光地などで「誰でも、登録なしで簡単に」利用できる公衆無線LANサービスが広がりはじめています。同時に「日本特有の問題」も浮かび上がってきます。

» 2015年05月27日 11時30分 公開
[宮田健ITmedia]

 「無料の公衆無線LAN」は、これまで日本ではほとんど普及していません。一方、米国ではカフェなどで無料Wi-Fiサービスが提供されていることが多く、わざわざ高額なローミング料金を払わなくても、メールのチェックくらいならばコーヒー一杯で簡単にできました。

 2020年には大きなイベントが東京で開催されることが決定しており、旅行業界をはじめ、多くの業種が特需に沸いています。公衆無線LAN環境も、海外からの旅行者が爆発的に増えることを予想して、少しずつ変化が起きているようです。

京都市が公衆無線LANを拡大

KYOTO Wi-Fi KYOTO Wi-Fi

 例えば、京都市は2014年12月に公衆無線LANをもっと簡単に利用できるようにしました(参照リンク)。それまでメールアドレスの登録が必須だったものを、利用規約に同意するだけでOKとしたのです。

 京都市内のバス停など1500カ所に無料のWi-Fiスポットが整備されました。しかし、京都府警は「万が一犯罪に利用されたときに特定が困難だ」として、京都市に対してセキュリティ向上を求めたという報道もありました。

 筆者の個人的な感想としては、犯罪インフラ化の可能性については技術で対抗するしかないと考えます。利用者の利便性を高めつつ、本人確認を行える仕組みが作れれば解決する話です。

犯罪インフラ化もイヤだけど、もっと現実的な問題は……

 もっと日本特有の問題が隠れていることを指摘する人もいました。セキュリティに詳しい知人がSNS上で書いた一言がその問題を端的に表しました。「磯野〜、3DS持ってバス停まで行ってエロ動画見ようぜ〜」と(苦笑)。

 まず、日本の子どもたちが持つ「IT装備の豪華さ」。わずか1万数千円のアイテムを手に入れることで、子どもたちは簡単にインターネットに接続できるようになります。そこに無料の無線LANが加われば、親が望まないコンテンツへのアクセスも可能になるでしょう。

 対抗策は、家庭のIT管理者である親が責任を持って、子どもたちが持つデバイスの機能を知り、適切な設定を行うことに尽きます。また、機器メーカーの自主的な取り組みも期待したいところです。

ニンテンドー3DS ニンテンドー3DS(出典:ニンテンドー)

 例えば、任天堂が2014年10月に発売した「Newニンテンドー3DS/New 3DS LL」では、それまでオプション提供だったインターネットブラウザーのフィルタリング機能が標準でオンになりました(参照リンク)。しかも、これを解除するにはクレジットカードが必要(手数料30円)という仕組みです。これは本当に素晴らしい仕掛けだと思います。

 また、「子供とネットを考える会」のような勉強会も各地で開催されています。このような場所で、意見を交換するのも有用でしょう。

 外国からのお客さまが便利に使えるものは、私たち、そして子どもたちにとっても同じこと。適切なコントロールは必要だと思います。そのためには適切な設定と、むしろ親側への教育が重要でしょう。「公衆無線LANが増設されて便利!」と思うのと同時に、便利の裏に落とし穴がなさそうか、親の立場、子の立場で想像してみるといいかもしれません。

著者紹介:宮田健(みやた・たけし)

デジタルの作法 『デジタルの作法』

元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。

筆者より:

2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。

これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。みなさんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。


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