改めて問う「クラウドの本質的なメリット」Weekly Memo(1/2 ページ)

企業がクラウドを利用するメリットは何か。最近、その本質的なポイントがぼやけてきているように感じる。ガートナーのフォーラムで同じ問題意識の話を聞いたので、その内容とともに掘り下げて考えてみたい。

» 2015年06月01日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]

明確な定義がない「プライベートとハイブリッド」

 パブリック、プライベート、そしてハイブリッド――。最近、どうもこれらの「クラウド形態」をめぐる論議に注目が集まり、企業がクラウドを利用する本質的なメリットがぼやけてきているのではないか。

 そう考えていたところ、ガートナージャパンが2015年5月26〜28日の3日間、都内で開催したプライベートフォーラム「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2015」の中のセッションにおいて、同じ問題意識の話を聞いたので、その内容を踏まえて「クラウドの本質的なメリット」を改めて考えてみたい。

 そのセッションの講師は、同社ガートナーリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀(またが)忠明氏。「クラウドコンピューティング・トレンド2015」と題した講演で、同氏はまず注目される技術の動向を示す同社独自の「ハイプサイクル」におけるクラウドの現状を説明した(図1)。

photo 図1 ガートナーの「ハイプサイクル」におけるクラウドの現状(出典:ガートナージャパンの資料)

 それによると、日本においてクラウドは、「期待と現実のギャップ」や「宣伝的クラウドの増殖」によってピーク期を越えた「幻滅期」にあり、「冷静な判断」と「本物と偽物の見分け」が求められるとしている。ただし、「幻滅期は短期で、中長期には大きなインパクトを与える」というのが亦賀氏の見方だ。

 では、日本企業におけるクラウド形態別の採用状況(採用率)はどうか。同社が今年(2015年)3月に実施した調査によると、パブリックのSaaSが28%、PaaSが16%、IaaSが15%、プライベートが23%、ホステッドプライベートが18%、ハイブリッドが12%。ただし、「プライベートとハイブリッドは定義が明確ではなく、例えば仮想化を施しただけでもプライベートとしている回答があった」と同氏は注釈を付けた。

 ちなみに、全体におけるクラウド採用率は16%。逆に言えば、84%の企業が現時点ではクラウドに手をつけていない状況が浮き彫りになった。この状況について亦賀氏は、「さまざまなクラウド形態が出てきた中で、ユーザー企業は既存システムを生かしたままでのクラウド利用を考えるケースが増えている。もちろん、そうしたアプローチも1つの手段だが、クラウド化する本質的なメリットを見失わないようにする必要がある」と指摘した。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ