企業におけるデジタルトランスフォーメーションの推進には、最高経営責任者(CEO)のリーダーシップが不可欠だ。果たして日本のCEOはその心構えと覚悟ができているか。世界のCEOを対象に行われた最新の民間調査結果をもとに考察したい。
企業におけるデジタルトランスフォーメーションの推進に向けて最も重要な役割を果たすべきCEOは、今、自社のビジネスに対してどのような懸念を抱き、今後何を最優先に取り組まなければいけないと考えているのか。こうしたテーマに合致した調査リポートが先頃公表されたので、今回はその内容をもとにCEOの課題を探ってみたい。
調査リポートは、国際会計事務所のKPMGが日本を含む主要10カ国の企業のCEOに聞いたビジネス課題などの調査結果をまとめた「KPMGグローバルCEO調査2016」。2016年3月から4月にかけて欧米やアジアなど10カ国、11業種の中堅および大手企業を対象に調査し、1268人(うち日本企業は103人)のCEOから回答を得たという。
まず、CEOが現在抱いている懸念事項としては、グローバルが図1、日本が図2の結果となった。いずれも17項目が挙がっているうち、16項目が順不同で同じ内容となっている。また、いずれも10位ほどまでは調査結果の数値に大きな差はないが、グローバルと日本の違いを見る上で図示された順位に着目したい。さらにここで強調しておきたいのは、これらの項目の多くが、デジタルトランスフォーメーションと深く関わっているということである。
両図において顕著な違いが見受けられるのは、上位の幾つかの内容だ。例えば、グローバルで1位の「世界経済の成長が想定以下であった時の自社のビジネスへの影響」は、日本では11位。また、グローバルで3位の「自社の将来を形づくる破壊とイノベーションの力について戦略的に考える時間がないこと」は、日本では10位となっている。
一方、日本で1位の「競合にビジネスを奪われる可能性」は、グローバルでは6位。また、日本で3位の「自身の判断基となるデータの品質」は、グローバルでは10位となっている。これらの比較では、グローバルが「戦略的」な懸念なのに対し、日本は「現実的」というか足元の懸念にとらわれているようにも受け取れる。加えて、「データの品質」に懸念を示す割合が高い日本は、自社のIT化に自信がないようにも見受けられる。
もう1つ気になったのは、グローバルでは12位の「最先端テクノロジーに追随すること」が、日本では17位だった点だ。これについては順位の差よりも77%と44%という数値の差が目を引いた。グローバルと日本において、最先端テクノロジーへの意識に違いがあることを象徴した結果といえそうだ。
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