富士通の2024年調査から考察 「ビジネスとサステナビリティを両立させている企業」の特徴は?Weekly Memo(1/2 ページ)

富士通の調査によると、サステナビリティを最優先事項とする企業の割合が上昇している一方で、対策の進捗(しんちょく)は芳しくない。サステナビリティをビジネスと両立させている企業は、その他の企業と収益や株価、市場シェアにおいてどのような違いが出ているのか。富士通の最新調査から考察する。

» 2024年05月07日 15時50分 公開
[松岡 功ITmedia]

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 多くの企業が重要な取り組みとして「サステナビリティ」を挙げるようになった。サステナビリティとは環境をはじめとする社会の持続可能性を追求することで、今や喫緊の社会課題として捉えられている。企業がサステナビリティに取り組むようになったのも、喫緊の社会課題に迅速に対応する必要があると考えているからだ。例えば、世界的に異常気象が発生していることから、温暖化対策の強化が迫られていることは誰の目にも明らかだ。

 企業にとって悩ましいのは、生業(なりわい)であるビジネスとサステナビリティの両立が難しいことだ。筆者はかねて「ビジネスとサステナビリティは相反する関係にあるのではないか」との疑問を抱き、サステナビリティに積極的に取り組む企業や関連サービスを提供するITベンダーに取材し、本連載記事でも幾度か取り上げてきた。

 今回は、富士通が2024年4月23日に発表した「富士通SX(サステナビリティトランスフォーメーション)調査レポート2024」(注1)を取り上げて、「両立に向けてどのような姿勢で臨むべきか」を考察したい。

 同レポートは、ビジネスとサステナビリティの価値創出に対する意識について日本を含む15カ国11業種の経営者層600人を対象として2023年11〜12月に実施したアンケート調査だ。 調査レポートの発表と同日である2024年4月23日に開催された発表会見では、同社グローバルマーケティング本部コーポレートマーケティング統括部シニアマネージャーの駒村 伸氏と、同マネージャーの高橋美香氏が説明役を務めた。

7割の企業が「サステナビリティは最優先事項」

 富士通はSXについて、「環境的・社会的価値を向上させながら、ビジネスを変革するデジタルイノベーションにより、企業・組織がより持続可能な未来に向けて変革すること」と定義している。SXの取り組みにおいて、デジタル技術の活用が必須であることはもはや自明だ。

 以下、同レポートで筆者が注目したグラフを6つ紹介していこう。

 図1は、SXに対する意識の変化を表したグラフだ。

図1 SXに対する意識の変化(出典:富士通の会見資料)

 「サステナビリティは今後5年間の最優先事項だ」と答えた回答者は2023年の57%から2024年は70%に上昇した。一方で、「外部の機関(第三者機関や政府など)が掲げるサステナビリティ目標を下回っている」との回答率も23%から45%に上昇した。この結果について同社は、「経営者層のSXに対する危機感は高まっているものの、サステナビリティの成果については厳しい状況が続いている」としている。

 図2は、14のSXの取り組みにおける優先度と進捗度を表したグラフだ。

図2 14のSXの取り組みにおける優先度と進捗度(出典:富士通の会見資料)

 縦軸が「具体的な成果(進捗度)」、横軸が「優先度」を示している。この結果について同社は、「優先度の高い取り組みが必ずしも成果につながっていない状況がうかがえる」との見方を示した。縦軸に表示された割合自体の低さが気になるところだ。ただ、同社が挙げた14の取り組みはSXの内容を具体的に見る上で参考になりそうだ。

 図3は、図1の右のグラフにあった「外部のサステナビリティ目標を下回っている」との回答を業種別に見たグラフだ。

図3 業種別「外部のSX目標を下回っている」回答数(出典:富士通の会見資料)

 富士通は、この項目で「外部のSX目標を下回っている」と回答した企業の割合が多い業界は、「サステナビリティに関する緊急性を認識している」としている。この図によると、「公共」「資源・エネルギー」が高い割合を示しているのに対し、製造業は低い割合にとどまっている。この結果は、「公共」「資源・エネルギー」における取り組みへの意欲が高いことを示すといえるだろう。

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