富士通とAWSがレガシーシステムのモダナイズに向け連携を強化 どの領域から着手する?

富士通とAWSは、レガシーシステムのモダナイゼーションの加速に向けてグローバルパートナーシップの拡大に合意したと発表した。両社の考えるレガシーシステムの定義と、モダナイゼーションの具体的な取り組みが分かる。

» 2024年03月19日 07時00分 公開
[大島広嵩ITmedia]

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 富士通とAmazon Web Services(以下、AWS)は2024年3月18日、レガシーシステムのモダナイゼーションの加速に向けたグローバルパートナーシップの拡大に合意し、本協業を「Modernization Acceleration Joint Initiative」(モダナイゼーション・アクセラレーション・ジョイント・イニシアチブ)として2024年4月1日から取り組みを開始すると発表した。

モダナイゼーション対象のレガシーシステムは?

 企業が競争力の向上や持続可能な経営を実現するため、基幹システムをクラウド化することによるモダナイゼーションのニーズが高まっている。モダナイゼーションでは既存の業務プロセスへの支障や新システムへの移行に伴うリスクを最小限に抑える必要があり、専門チームのサポートが不可欠だ。富士通とAWSはどの領域から着手するのだろうか。

 本協業では、顧客のメインフレームやUNIXサーバで稼働する基幹システムのアセスメントから、移行、モダナイゼーションまでの支援を提供する。両社は、金融や小売、自動車をはじめとする製造業など、多様な業界の顧客がAWSのクラウドでレガシーシステムのモダナイゼーションできるよう支援する。顧客は、刷新した基幹システムで実現する俊敏性(アジリティー)や強靱性(レジリエンシー)を生かして、急速に変化するビジネス環境に対応できるとしている。

 富士通は、さまざまな業種の生産管理や販売物流などのミッションクリティカルシステム構築で培ってきたシステムインテグレーションの技術や知見と、顧客がクラウドテクノロジーのビジネス活用をできるよう支援する「AWSプロフェッショナルサービス」の経験を融合し、「AWS Mainframe Modernization」などを活用して顧客のイノベーションを支援する。

 富士通とAWSのモダナイゼーションの対象は、「GS21シリーズ」を利用している企業だ。次にGS21シリーズ以外の富士通製UNIXサーバや他社製メインフレームを利用している企業へと対象を広げ、2029年までの5年間で欧州や北米、アジアなどで40社の移行を支援する予定だ。

 また富士通とAWSは、「GS21シリーズ」を利用している企業のサポートのために、一連の開発ツールである「AWS Mainframe Modernization」をモダナイゼーションできる形に最適化した。顧客は、AWSプロフェッショナルサービスのサポートの下でAWS Mainframe Modernizationのリファクタリングソリューションである「AWS Blu Age」を活用することで、「COBOL」「PL/I」(ピーエルワン)といったレガシーなプログラム言語をJavaに自動変換できる。これにより、GS21シリーズを利用中の企業は移行とモダナイゼーションに必要な期間とコストを削減可能だ。

 富士通とAWSは実際に、GS21シリーズを稼働している富士通の基幹システムでAWS Blu Ageを活用したモダナイゼーションを実施した。その結果、COBOLを用いた基幹システムがスムーズにJavaに変換され、変換後もAWSのクラウドで従来と同様に稼働することを確認した。先行事例として、髙島屋のレガシーシステムをAWS Blu Ageによってマイグレーション中だ。富士通とAWSは、移行の期間短縮やコスト削減を見込んでいる。

 富士通は、モダナイゼーション後も顧客がビジネスに注力できるように、「Fujitsu Cloud Managed Service」でクラウドの運用最適化を支援する。これは同社がユーザー企業のビジネス成長と社会課題の解決を支援する「Fujitsu Uvance」の重点分野の一つである「Hybrid IT」で提供するものだ。

 さらに将来的にはAIや生成AIを活用したレガシーシステムのモダナイゼーションにも取り組み、システムのコード解析やクラウド環境管理、検証などにおいて、さらなるコスト削減や俊敏性、強靭性、イノベーションを実現し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速を支援するとしている。

 富士通の島津 めぐみ氏(執行役員 SEVPグローバルテクノロジーソリューション)は以下のようにコメントした。

 「AWSとグローバルパートナーシップを拡大し、レガシーモダナイゼーションにおける協業に合意できたことを大変うれしく思っています。AWSクラウドと、当社の長年にわたるメインフレームやUNIXサーバ事業で培ってきた基幹システム構築の知見を掛け合わせることで、多くのお客さまの迅速で安全なモダナイゼーションを実現します。また、モダナイズ化の次のステップとして、クロスインダストリーで社会課題を解決していく事業モデルFujitsu Uvanceのさまざまなオファリングを活用して、お客さまの持続可能なビジネスに貢献していきます」(島津氏)

 また、AWSのUwem Ukpong(ウウェム・ウクポン氏)(グローバルサービス担当バイスプレジデント)は、以下のように期待を寄せた。

 「AWSとのパートナーシップを拡大するという富士通のコミットメントを歓迎します。レガシーシステムのモダナイゼーションの加速は、DXの実現に向けて不可欠です。2012年以来、富士通とAWSは協力して、日本と世界のお客さまがイノベーション、生産性の向上、課題の解決を行えるよう支援してきました。富士通と協力して両社の専門チームによるお客さま支援の質を高め、現在の生成AI時代において、お客さまがメインフレームデータから洞察を得られるよう支援できることを楽しみにしています」(ウクポン氏)

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