クラウドとモバイルの関係について考えるとき、忘れてはならないのが2006年に登場したiPhoneだ。斎藤氏は、モバイルインターネット普及の原動力となった「iPhone登場」の衝撃の1つに、搭載ブラウザで「Flashが使えなかったこと」があると指摘した。
スマートフォンが普及すればするほど、多くのコンテンツプロバイダーがFlashでアプリを作ることに対して危機感を持つようになり、その結果、Flashのシェアが落ちて、それに代わる技術が注目されるようになった。それが、「Ajax」という技術だ。
この技術によって、プラグインを必要とせず、ブラウザが持っている標準的な技術だけを使って、Webアプリネイティブなアプリのように滑らかに動かせるようになった。ブラウザ上でも滑らかにWebアプリを動かせるようになった。
「Ajaxの登場で、ブラウザがあればPCにアプリを入れなくても、インターネットの向こうにあるアプリをPCに導入したアプリのように滑らかに、使い勝手よく利用できる世界が実現可能となった」(斎藤氏)。つまり、クラウドの利用がこの技術によって加速したのだ。
講演の最後に斎藤氏は、インターネットの歴史を振り返りながら、ITがどう進化してきたかを振り返った。
インターネットやクラウドが登場する以前は、限られた利用者同士がネットワークを結び、特定のサービスを利用していた。そして、インターネット以降は、誰もが利用するオープンなネットワークでサービスを利用し、それらをお互いにやりとりできるようになった。斎藤氏は「このようにITの使い方が大きく変わってきた」と述べた。
その結果として、さまざまなサービスや企業がインターネットとクラウドを経由して、お互いにデータをやりとりできる環境が整ってきた。それが、新たなサービスを生み出し、ビジネスや社会の仕組みを変化させているという。
当初クラウドは、単にコンピュータを安く調達するための1つの手段と考えられていた時期もあったが、今は状況が大きく変わり始めている。クラウドやモバイル、IoTが一体となった「新しいITの基盤」が構築され、ビジネスや社会に本質的な変化をもたらし始めているのだ。
「仕事でも日々の暮らしでもネットワークを経由して情報システムとつながるという新しい社会基盤ができあがろうとしている。クラウドがもたらした本当の価値はそこにある。これによって仕事のやり方が変わり、人との関わり方も変わり、価値観も変わっていく。こうした本質的な変化が、クラウドの登場によって引き起こされている。これらは常識が変わる、いわゆる『パラダイムシフト』だ」(斎藤氏)
斎藤氏は、パラダイムシフトによって「世の中には、今後、どのようなことが起きていくのか、それについてはデジタル改革塾の最終回で詳しく説明したい」と述べ、セミナーを締めくくった。
デジタル改革時代の新しい常識や知識を身につけるための勉強会、「デジタル改革塾」を6月13日(火)に開催します。
今回のテーマは「IoTがもたらすビジネスの破壊と創造」。ネットワークにつながることでモノの価値が本質から大きく変わる――。IoTは今、とてつもなく大きなパラダイムシフトを起こそうとしています。そんなIoTによって、私たちのビジネスはどう変わるのでしょうか。IoTが生みだした新たな世界の仕組みを学び、企業ITとビジネスの今後をみんなで一緒に考えてみませんか。
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