「Amazonの半額」を保証、Oracleが自律型DBでクラウドシフトを加速Oracle OpenWorld San Francisco 2017 Report

Oracle OpenWorldが開幕、オープニングの基調講演で、エリソン会長兼CTOは、「データベースは世界でこれしか必要ない」とし、新たに投入する自律型のOracle 18cとそれをベースとしたクラウドサービスをぶち上げた。SLAは何と99.995%、コストもAmazonの半額を保証するという。

» 2017年10月02日 15時30分 公開
[浅井英二ITmedia]

 カリフォルニア州サンフランシスコは世界中の旅行者を引き付ける全米有数の観光地だ。普段のダウンタウンは彼らでごった返し、名物のケーブルカーが「チンチン」と鳴らす鐘の音ものんびりとして愉快だが、今週は日曜日の午後から様子が違う。スラックスにジャケットを羽織り、一目でそれと分かるビジネスマンらが足早に歩き、目抜き通りからも近いコンベンションセンターへと向かう。彼らの目当ては、Oracleの総帥、ラリー・エリソン氏の基調講演だ。

 米国時間の10月1日夕方、同社の年次カンファレンス、「Oracle OpenWorld San Francisco 2017」がモスコーニセンターで幕を開けた。何と6万人がダウンタウンに集まり、Webキャストの視聴者も桁違いの1800万人に上るという。

Oracleのラリー・エリソンCTO

 Amazonによって業界の変革が進んでいるのはリテールだけではない。クラウドコンピューティングの浸透によって、IT業界においても同社の存在感が日ごとに増している。この業界を切り開いてきたIBM、Microsoft、そしてOracleもクラウドに大きく舵を切り、巻き返しに躍起だ。5月末で締めた2017会計年度では、Oracleのクラウド事業は約47億ドル、全体の売り上げ約379億ドルに対する比率は十数パーセントにまで高まってきている。新しい年度に入ってもクラウドの売り上げが好調で、直近の第1四半期は約15億ドルへとさらに数字を伸ばしている。

 「データベースは世界でこれしか必要ない」── オープニングの基調講演に登場したエリソン会長兼CTOは、一段ギアを上げて同社のクラウド事業を加速する「世界初の自律型データベース」をぶち上げた。バージョンナンバーを西暦に合わせて幾つも飛ばした「Oracle Database 18c」がベースとなる「Oracle Autonomous Database Cloud」は、機械学習の機能によって、人手を省き、それらによるヒューマンエラーをなくし、チューニングも自動化される。高い可用性と優れたパフォーマンス、そしてセキュリティをより低コストで実現できるようになるという。

世界初の自律型データベース

 チューニング、パッチによる修正、アップデート、メンテナンスなどは、大規模なデータベースをビジネスに活用するうえでは欠かせない大切な作業だが、それらに掛かるコストは企業にとって大きな負担となっている。しかも、それらの多くの作業が、システムを止めて行う必要があるため厄介だ。脆弱性を修正するパッチの適用でさえ迅速に行うことが難しく、定期的なメンテナンスまで放置されることが多いという。

 「サイバー攻撃への対策としては、修正パッチは迅速に適用すべきだが、ビジネスのことを考えるとシステムを止められない。システムを止めずに自動でアップデートしたり、修正パッチを適用してくれる機能が必要だ」とエリソン氏。

 必要に応じてCPUやストレージも自動時に拡張・縮退してくれるため、コストも大幅に節約できるという。

 「インターネットに匹敵するほど革新的だ。われわれの歴史の中でも最大の技術革新となる世界初の自律型データベースだ」と自信を見せる。

 その自信は、「99.995%」という強気のSLAにも表れている。計画停止と非計画停止を年間30分未満に抑え込むというもので、クラウドサービスとしては常識破りだ。

 「AmazonのSLAには例外がたくさんある。CPUやストレージの追加、計画的なメンテナンス、データベースのアップグレードやパッチ適用、ソフトウェアのバグ……、これらはみんな例外だ」とエリソン氏。Amazonへの「口撃」の方も止まらない。

 恒例となっているデモでもエリソン氏は手を緩めることはなかった。年内にも登場するOracle Autonomous Data Warehouse CloudのパフォーマンスをOracle on AmazonやAmazon Redshiftと比較し、圧倒的なスピードと低コストを印象づけた。

 「われわれはベンツのような高級車と思われているかもしれないが、実際にはAmazon Redshiftの方が9倍から15倍も高くつく。何より彼らがそれをよく知っている。その証拠に彼らはわれわれの最大の顧客の1つだ」(エリソン氏)

 SLAには「Amazonの半額を保証」とも書き加える予定だという。

(取材協力:日本オラクル)

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