「優秀な若手は5年で必ず現場へ異動」 三井住友カードの情シスキャリアパスがすごいデジタルトランスフォーメーション時代に必要な人材とは?(2/3 ページ)

» 2017年11月28日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

「モード1」と「モード2」のバイモーダル開発体制を構築

 「ココイコ!」は端的に言えば、カード加盟店に送客するO2O(Online to Offline)サービスだ。クリック1つで来店エントリーができ、有効期限内に対象店舗でカード決済をすると、会員に「キャッシュバック」や「ポイント」といった特典が提供される。

 ココイコ!が生まれたきっかけは、ユーザー部門のトップがCIOに、「新たなビジネスチャンスである、送客を目的にしたサービスを作れないか」相談したことからだ。

photo ココイコ!はカード加盟店に送客するO2O(Online to Offline)サービスだ

 顧客や社会情勢の変化に対して、柔軟かつスピード感を持った開発を行うため、森氏はクラウドを活用した内製開発を行うことを決意。システム部門主導の開発体制(モード1)とビジネス部門主導の開発体制(モード2)の“バイモーダル開発体制”を構築した。

 具体的には、勘定系の処理を含む基幹系システムから、マーケティングデータを作成するまでの部分はパートナーの開発会社に外注。マーケティングの対象を選び、Salesforce Marketing Cloudを使い、実際にユーザーにプッシュ配信するまでを自社で内製を行った。顧客と直面していない基幹システムがらみの部分をモード1、顧客と直面するクラウド部分をモード2とした形だ。

 「モード2の部分はアジャイル開発なども取り入れました。しかし、これも顧客と直面して変化が多いシステムだからこそ生きること。基幹システムが関わる部分でそれをやっても効果は上がりません。そしてモード2の部分においては、広い範囲の技術をカバーできるフルスタックエンジニアがいないと戦っていけないでしょう」(森氏)

優秀な若手情シスをフロントに異動させる

 そうしたフルスタックエンジニアがカバーすべきはITだけではない。ビジネスの状況を理解していなければ、真に顧客に求められるサービスは作れない。逆にITが分かる人材がビジネスの現場にいることで、ビジネスとIT、双方のコミュニケーションもスムーズになる。内製開発では特に大切なことだ。

 そのため、森氏は情シス部門にいる優秀な若手を、積極的にビジネス部門に排出する人事ローテーションプログラムを提案した。新入社員をコールセンターなど、顧客と直接応対する部署に配属した後に、情シス部門に配属。そしてシステム開発経験を積ませ、最長5年をめどに、営業やサービス企画などのフロント部門に異動させるというものだ。

 森氏がこの構想を出したのは、三井住友カードに入社した2008年のこと。当時の情報システム部門は、100人程度の組織と十分な人員がいたものの、他部門に人を送り出す文化や思想がなく、「システム開発に支障が出る」と批判されるなど、さまざまな人の“抵抗”に遭ったという。

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