多久市教育委員会の田原優子教育長は、「多久市では、毎月80時間以上の残業をしている教員が40%以上を占めている。2019年にはこれをゼロにしたい」と語る。
だが、毎月80時間以上の残業をする教員がゼロになっても、70時間以上の教員が4割残っては意味がない。また、自宅で作業ができるようになっても、それが時間外の仕事を増やすことになるのでは意味がない。教員の仕事をどう効率化し、仕事そのものを減らすかが鍵になる。
例えば、教員への作業負荷が大きいものの1つに、教材づくりがある。
多久市では、クラウドを活用することで、教材などのコンテンツを蓄積。教員同士が共有することで、教材の制作にかかる時間を削減するといったことを目指す。
「教材の共有については、これまでにも行える環境はあったが、教員のPCが1人1台の環境になっていなかったことで促進されなかった反省がある。また、クラウド環境で運用することで、自分のPCにコンテンツを残さず、セキュリティが強化されるため、利用を促進できると考えている」と、多久市教育委員会の田原教育長は語る。
実際、東原庠舎中央校の古川能正教諭は、「台形を切って長方形を作るといった算数の教材を紙で作成する場合、子どもたちが失敗したときを想定して、余分に教材を作る必要があったが、デジタルコンテンツを利用すれば、こうした手間がいらない。ここだけを捉えれば、教材準備にかかる時間は3分の1程度にまで短縮できる」と期待する。
教員にとってみれば、質を落とさず作業時間を削減できるなら、活用したいと思うのは明らかだ。
だが、その一方で、「教員同士が教材をシェアするメリットはあるものの、教員自らが教材に独自の工夫を加えることが一般的であるため、教員ごとの指導方法に合わせたコンテンツを広く蓄積していくことも必要だろう」と指摘する。
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