佐賀県にある小中一貫校が「Microsoft 365 Education」を採用。Windows 10とOffice、Microsoft Azureを使い、新たな学校教育と教員の働き方改革を進めていくという。実際に小学5年生の授業を見ると、教育における「デジタル化」の威力が伝わってきた。
昨今、厚生労働省がいわゆる「ブラック企業リスト」を公表するなど、企業における長時間労働が話題になることが多いが、「学校の先生」の長時間労働も大きな問題になっているのをご存じだろうか。
文部科学省の調査によると、1週間あたりの総労働時間は、小学校教員で平均57時間25分、中学校教員で平均63時間18分(2016年度)だった。2006年と比較しても4〜5時間ほど増えており、「過労死ライン(月80時間以上の時間外労働)」を超える教員も少なくない。そんな背景から、教員の「働き方改革」が叫ばれているのだ。
クラウドを使い、教員の生産性を高め、生徒の授業も進化させる――そんなプロジェクトを始めた自治体がある。佐賀県にある多久市だ。同市はソフトバンク コマース&サービス(以下、ソフトバンクC&S)、日本マイクロソフトと連携し、市内の義務教育学校(小中一貫校)全3校に「Microsoft 365」と「Microsoft Azure」を導入した。2018年1月26日から、2019年3月31日までの実証プロジェクトとして運用するという。
多久市は、早い段階からICT教育に取り組んできた。2009年には市内全ての小中学校へ電子黒板87台を導入したほか、専属の支援員も配置。2013年から2015年にかけては、タブレットを活用したデジタル教材の実証実験を行っている。
2016年度には、総務省の「先導的教育システム実証事業」に参加。小学校と市役所を「Skype」でつなぎ、5年生が市長に「未来の多久市」についてプレゼンテーションを行うといった取り組みを進めてきた。こうした取り組みをする中で、マイクロソフトとつながりができたことが、今回のプロジェクトが始まる発端となったそうだ。
「PCや電子黒板など、モノを入れるだけでは教育とはいえない。ICT教育の目的は、自分が未来を作るという意識を育てること。そのためのPCであり、電子黒板であり、ネットワークだと考えている」(多久市市長 横尾俊彦氏)
今回のプロジェクトでは、ソフトバンクC&Sのクラウド運用サービスと、マイクロソフトの教育機関向けクラウドサービス「Microsoft 365 Education」を採用。国内では初の事例となった。市内の全小中学校にタブレット端末190台を導入し、生徒同士が学び合い、議論を深める「協働学習」を全授業の8割で行うことを目標としている。
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