VerizonやRBC、北米の老舗企業がクラウドとWatsonで勝ち組に：IBM Think 2018 Report

今週、IBMはWatsonやクラウドをはじめとする、すべてのブランドを集結させた初のカンファレンス、「IBM Think 2018」をラスベガスで開催している。ロメッティCEOは、IBM CloudとWatsonで変革を進めるVerizonやRBCをステージに引き上げた。

[浅井英二，ITmedia]

IBMのジニー・ロメッティ会長兼CEO

　テーマパークのような名門カジノホテルが目抜き通りに軒を連ねるラスベガス。IBMはWatsonやクラウドをはじめとする、すべてのブランドを集結させた初のカンファレンス、「IBM Think 2018」の地としてコンピュータ見本市のメッカを選んだ。会場となったマンダレイ・ベイ・ホテルやMGMホテルには、顧客やパートナーら約4万人が詰めかけている。

　同社のジニー・ロメッティ会長兼CEOは、「トランジスタ集積度に関するムーアの法則やネットワーク通信の価値に関するメトカーフの法則を振り返れば分かるが、指数関数的なテクノロジーの進化がビジネスの変革と同期したとき、破壊的なイノベーションが起こっている。爆発的に増え続けるデータから指数関数的にナレッジが生み出される“Watsonの法則”が、新たな歴史として付け加えられることを期待している」と話す。

　米国時間の3月20日早朝、IBM Think 2018はマンダレイ・ベイ・ホテルのアリーナで行われたロメッティCEOの講演で幕を開けた。新たな市場を切り開きつつあるWatsonはもちろんのこと、Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureとの差を詰めたいIBM Cloudなど、同社にとっては負けることが許されないテクノロジーやソリューションを一堂に集めた初の試みだ。「IBMは顧客の皆さんに賭けた。指数関数的に進化するテクノロジーで破壊的な変革を実現してほしい」とロメッティ氏も力を込める。

　彼女がステージに招き上げたのは、米通信大手のVerizon Communicationsやカナダの大手銀行、RBC（Royal Bank of Canada）。いずれも伝統的な老舗企業だが、テクノロジーへの果敢な投資によってデジタルディスラプション時代の勝ち組となっている。

　「戦略的な投資を加速させている5Gは、次なる産業革命の起爆剤となるものだ。コネクティビティの企業として、さまざまなディスラプターとの協業を拡大していきたい」と話すのは、ローウェル・マカダム会長兼CEO。米国最大の携帯事業やグローバルなネットワーク、セキュリティ、およびクラウドの各事業を展開する同社だが、2015年にAOLを、16年にはYahoo!を相次いで買収、新会社Oathを設立し、モバイルメディア企業としての地歩も固めた。

　「Oathの狙いはAI」とマカダム氏は明かす。

RBCは全く異なる銀行に

RBCのデイビッド・マッカイ社長兼CEO

　創業から150年以上の歴史を誇るRBCも、デビッド・マッカイCEOは、「全く異なる銀行になる」と意気込む。

　「最近まで家のローンを組むとなれば、店舗の営業時間に来店してくれたが、今は違う。さまざまな銀行サービスをスマートフォンの小さな画面から提供できなければならない。モバイルペイメントが普及し、例えば、Uberのようにサービス提供のプロセスに組み込まれた決済も増えていくだろう。今までとは違うやり方でもっと迅速に新しいサービスを開発・提供していくためにはクラウドが必要だ」とマッカイ氏。

　昨年秋、問い合わせ窓口にWatson Assistantも導入、この3〜4カ月で顧客とのインタラクションは4800万に上っているという。

　「AIを活用し、どのようにデータを知識に変えていくかがカギになる。中小規模の企業顧客には、取引のデータを基にしたパーソナルCFOのようなサービスが考えられる。彼らにとっては、顧客が第一であり、会計などやりたくないからだ」とマッカイ氏はWatsonの幅広い応用を視野に入れる。

　「企業にとってデータを基盤としたAIの活用には大きな機会がある。データの80％は検索できない状態で企業にあり、Watsonはそれらを解放し、知識に変えることができるからだ」とロメッティ氏。

　今週、Facebookは大規模な個人情報漏えいと対応のまずさから批判を浴び、株価も急落しているのを意識してか、しっかりとクギを刺すことも忘れなかった。

　「Watsonなら競争力の源泉でもあるデータは企業が引き続き所有し、守ることができる。コンシューマー向けのAIとは違い、エンタープライズ向けはそうあるべきだ。それがわれわれIBMの考え方だ」（ロメッティ氏）