日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まない原因について、経済産業省はブラックボックス化したレガシーシステムにあるとし、このままでは膨大な経済損失が生じると警鐘を鳴らす。果たして、あと7年で日本企業のデジタル改革は間に合うのか?
この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。
2018年一番のバズワードとなりそうな「デジタルトランスフォーメーション(DX)」ですが、どうもこれまでのシステム導入の延長線上でのイメージや、あるいは単なるクラウドへの移行を指しているような議論も多いように思います。まあ、バズワードだから仕方がない部分もあるのですが。
ITソリューション塾でも、最近、この話をしていますが、私たちの考えでは、DXはこれまで日本企業が行ってきた「IT化」の延長線上にあるのではなく、「企業構造の抜本的な改革」を指すということです。詳しくはこちらをご覧ください。
クラウドと現実世界を統合するCPS(Cyber-Phisical System)、アジャイル開発やDevOpsなどにより、ITシステムの開発や運用は迅速化していますが(日本では正しいアジャイルやDevOpsが導入されていない、という議論もありますが、それはまた別の話として)、その一方で、迅速化した開発・運用に企業の他の部門(営業や企画・経営)がついていけないという状況になっています。
それに対応できるように、事業プロセスを見直し、徹底的なIT化を行わなければならないのです。これが、「全ての企業が本質的にIT企業になる」ということであり、「あらゆるユーザー企業が“デジタル企業”に」ということです。しかし、この転換には相応の時間がかかるでしょう。
そのような中、2018年9月に、経済産業省がちょっと変ったレポートを公開しました。
お役所がまとめるレポートというと、データや現状分析はしっかりしているけれども、技術動向や将来の見通しについては安全側に寄り気味、というようなイメージがあったのですが、このレポートは、タイトルに「崖」とあるように、「このまま何もしなければ日本経済は崖から落ちる。今、なんとかしないと」という危機感に満ちたもので、これまでとちょっと違うレポートだな、と思っていました。
このレポートについてはいろいろ報道もありますので、注目したい点のみ引用します。冒頭で
あらゆる産業において、新たなデジタル技術を使ってこれまでにないビジネスモデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起ころうとしています。
と始まり、
しかしながら、(中略)ある程度の投資は行われるものの実際のビジネス変革にはつながっていないというのが多くの企業の現状です。
と、危機感をあらわにしています。
そして、DXが進まない理由を、「老朽化・複雑化・ブラックボックス化」した既存システムにあるとし、この問題を解消(≓システムの刷新)できない場合、DXを実現できないばかりでなく、既存システムの維持管理費が高額化し、担当者の不足などが加わり、2025年以降最大12兆円/年の経済損失が生じる負のスパイラルに陥る可能性があるとしており、これが報告書のタイトルにある「2025年の崖」です。
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