企業の基幹業務であるERPベンダーからデジタル変革を支援するベンダーへと変身しつつあるSAP。その支援のカギとなるデジタルエコシステムの戦略から、デジタル変革支援の最前線を探ってみる。
「パートナー企業との連携をさらに強化し、お客さまのデジタル変革を強力に支援していきたい」
SAPジャパン 常務執行役員 デジタルビジネスサービス事業本部長の工藤晶氏は、同社が先頃開いた「デジタルエコシステム」戦略についての記者説明会でこう強調した。
SAPは今、企業の基幹業務であるERP(Enterprise Resource Planning)ベンダーからデジタル変革を支援するベンダーへと変身しつつある。その支援のカギとなるのが、デジタルエコシステムである。本稿ではその戦略から、同社が提供するデジタル変革支援の最前線を探ってみたい。
会見ではまず、戦略の概要について、SAPジャパン バイスプレジデント チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー兼デジタルエコシステム統括本部長の大我猛氏が次のように説明した。
SAPがIDCと共同で実施した調査によると、「SAPパートナーエコシステムの経済規模が今後5年で2倍になる」と予測。その内容を示したのが図1である。グローバルでの市場規模が、現在の1000億ドル(2019年4月8日時点、約11兆1770億円)から2024年には2000億ドル(2019年4月8日時点、約22兆3540億円)になるという。この数字を基に「日本はグローバルの6〜7%の事業規模」(大我氏)ということから、日本の市場規模は7000億円から1兆4000億円になるとしている。
またエコシステムをリードするのがSAPではなく「エコシステム」に代わるなど、「エコシステムの“質”も大きく変わる」(大我氏)と説明。他の項目も合わせて図1は、SAPに限らずデジタルエコシステムによる変化を端的に示しているので、ぜひチェックしていただきたい。
日本でのデジタルエコシステム戦略における2019年の重点施策としては、パートナーエコシステムの成長拡大とオープンイノベーションを促進していくために、「パートナーサクセスプログラムの提供開始」「パートナーによるインテリジェントエンタープライズ提案の加速」「ビジネスイノベーターズネットワークのさらなる活性化」の3つを挙げた。
特に今回の会見で新たに発表した「パートナーサクセスプログラム」は、事業計画からデリバリーに至るまでの各プロセスをエンドツーエンドでサポートするものとして、その内容を図2に示した。大我氏はこのプログラムについて、「既存パートナーの人員拡大をサポートするとともに、新規パートナーの参入障壁を下げることが目的」と説明した。
また2つ目のパートナーによるインテリジェントエンタープライズ提案の加速では、ERPをはじめとした業務アプリケーションと人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)などのデジタル技術が融合したインテリジェントエンタープライズの実現に向けて、図3のようにSAPがこれまで推進してきた2つのコンソーシアムを統合したことを明らかにした。
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